人を集める建物ネーミング<後編>

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2018年11月号『人を集める場所』に記載された内容です。)

どんな商業施設が、人を集めているか

日経リサーチは毎年、「商業施設(集客力)ランキング」を出しています。首都圏約15,000人、関西圏約7,000人の居住者に施設の利用状況を調べ、その結果をまとめたものです。調査は春と秋の年2回実施し、直近は2018年春ですが、この結果を紹介します。


首都圏のトップ10は、1位「伊勢丹 新宿店」、2位「渋谷ヒカリエ」、3位「銀座三越」、4位「西武池袋本店」、5位「小田急百貨店 新宿店」、6位「京王百貨店 新宿店」、7位「ヨドバシAkibaビル」、8位「池袋サンシャインシティ」、9位「ルミネ新宿」、10位「GINZA SIX」でした。


関西圏のトップ10を見ると、1位「阪急うめだ本店」、2位「ヨドバシカメラマルチメディア梅田」、3位「大丸梅田店」、4位「グランフロント大阪」、5位「LUCUA」、6位「阪神梅田本店」、7位「阪急三番街」、8位「Whityうめだ」、9位「LUCUA 1100」、10位「あべのハルカス近鉄本店」でした。


首都圏と関西圏のネーミングを、文字の種類で比べてみると、「漢字ネーミング」は首都圏5、関西圏4、「カタカナ名+ローマ字ネーミング」は首都圏5、関西圏6と、あまり変わりません。


次に「カタカナ名+ローマ字ネーミング」の設立年を見ると、1975年「ヨドバシ」、1976年「ルミネ」、1978年「サンシャイン」、1987年「Whity 」、2011年「LUCUA」、2012年「ヒカリエ」、2013年「グランフロント」、2014年「ハルカス」、2017年「GINZA SIX」です。


これらを見ると、首都圏の方が関西圏より、「カタカナ名+ローマ字ネーミング」の取り入れが、早かったことがわかります。


人を集める建物ネーミングの創り方
最後に、建物ネーミングの発想ポイントを見てみましょう。私は、建物ネーミングの「発想4要素」を「意味・視覚・音感・語数」としています。


<1>意味=そのネーミングは建物で伝えたい「意味」を、しっかり伝えているか。

その建物が最も主張したいのは、その建物の「意味」です。ネーミングはまず、その名前を見たり聞いたりしたら、その建物の内容や意味が伝わるかどうかを考えるのが基本です。おもしろいとか、奇抜とかは、あくまで付属物だと考えるべきです。


<2>視覚=見た目は大事。そのネーミングは「視覚」に訴えているか。

人は情報の85%を視覚から入手するといわれます。ですから「見た目」のインパクトは大変重要です。視覚に訴える要素は、「文字、ロゴ、色彩」の3要素です。まず「文字」では、ひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字の4種類の文字の組み合わせをどうするかです。また独自な「ロゴデザイン」を考えなければなりません。そして「色彩」で、どうインパクトを与えるか工夫することも重要です。


<3>音感=目の次は耳。そのネーミングは「音感」が良いか。

音感は、発音がしやすく、聞きやすくて、気持ちよく感じられるか、などが基本です。活字時代のネーミング開発は、視覚中心でした。しかし、現代のように映像時代になると、視覚に加え「音感」の重要性も非常に大きくなってきました。


<4>語数=ネーミングは「7文字以内」が理想。長いと覚えられないから。

記憶の研究者ミラーは、「マジカルナンバー7±2」という研究で、数字や単語の記憶は、たとえ短期的な記憶でも、7文字前後が限界だとしています。ですからネーミングは、長くても7文字以内が理想といえます。

しかし、この4要素を考えないネーミングをよく見かけます。例えば、マンション名で、凝っているが、意味が分かりにくいものが良くあります。住む人にとっても近隣の住人にとっても分かり易いネーミングであってほしいと思います。またとっても長すぎるネーミングもあります。手紙の住所を書くのに難儀ではないかと、いらぬ心配をしてしまいます。



建物ネーミングを考える時はぜひ、この建物ネーミングの「発想4要素」をうまく活用してほしいと思います。

前編はこちら>>https://www.jma2-jp.org/article/jma/k2/categories/517-mh181102

高橋  誠  (たかはし  まこと)
㈱創造開発研究所  代表(教育学博士)
東京教育大心理卒、筑波大修士、東洋大博士課程修了。
産能短大専任講師を経て創造性の研究と実践の㈱創造開発研究所を創立。現在、日本教育大学院大学名誉教授・日本創造学会理事(元会長)。企業や行政に企業戦略、人事・教育戦略、新商品開発、ネーミング・ブランド戦略、マーケ戦略を指導。
著作は『創造力事典』『問題解決手法の知識』『ひらめきの法則』『最新のネーミング強化書』『会議の進め方』他、総計77冊。

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