(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年12月号『コロナの炙り絵@LIFE』に記載された内容です。)


1.少子化のラスボスは非交際化からくる未婚化


 

人口動態の専門家として、最初にはっきりと伝えておきたいのは、日本の少子化、すなわち出生数の減少は、「夫婦が子どもを産まなくなったこと」が主たる要因ではない、という統計的事実である。
完結出生児数、といわれる初婚夫婦が最終的にもつ子どもの数は1.9をキープしており、簡潔に言うならば、「夫婦は約2人、子どもを持っている」のである。ではなぜ、こんなにも出生数が激減しているのか。

ここで「なぜこんなにも激減したのか」について、「少しは子どもが減ってもいいんだよ、広々として快適になるしね」といった感覚を持っている読者に、どの程度、産まれる赤ちゃんが減ったのかを示しておきたい。

第2次世界大戦終戦後、最大の年間出生数(約270万人)であった団塊世代は現在70代前半であるが、そのジュニア世代である1970年代前半生まれ(団塊ジュニア)の40代後半の出生数は、年間約200万人であった。これは、団塊世代の74%程度となる。

この団塊ジュニアが20歳を超えることとなった(=親になり始めた)1990年代に出生した赤ちゃん(現在20代人口)は、年間約120万人であり、団塊世代の44%、団塊ジュニア世代の60%へと減少する。

そして、現在の乳幼児(2015年以降の出生)は約90万人まで減少し、これは団塊世代の33%、団塊ジュニア世代の45%、20代人口の75%である。つまり、70代前半のおじいちゃん、おばあちゃん達の1/3しか、アラフィフ男女の半分以下しか、日本は乳幼児がいないのである。

これは「ちょっとは減った方が」レベルの話ではない。「半世紀待たずに出生数が半数以下に大激減している」というのが、日本の人口の統計的な事実である(図表1)。

よく日本の人口動態について、「先進国最速の高齢化」といった高齢者の視点からの表現がなされがちであるが、これが日本の人口問題の危機を非常にわかりにくくしている。

「先進国最速の高齢化」は、その因果関係から考えれば、すなわち「先進国最速の出生数の減少」を意味している。この「先進国最速の出生数の減少」が発生している日本において、すでに「赤ちゃん消滅社会=絶滅危機」へのカウントダウンが始まっていることを十分に理解しておきたい。

ここで、「半世紀たたずに出生数が半減以下となっているはずなのに、夫婦は2人子どもをもっているのか」という疑問が出てくる。夫婦が2人こどもを持つことができれば、出生数は再生されるのではないのか。少なくとも1.9を夫婦が維持しているはずなのになぜ、赤ちゃん数は半減以下なのか。

ここででてくるのが未婚化問題、である。つまり「カップルなくして、赤ちゃんなし」が日本の現状、少子化のラスボスである。ちなみに、2015年の国勢調査からは、50歳男性の1/4、女性の1/7に婚歴がないということと、1990年代以降、この50歳婚歴無し率が急上昇していることがわかっている(図表2)。

また、これは非交際化がパラレルに上昇していることが大きな原因となっていることも、あわせて理解しておきたい(図表3)。

そうなると、「そんなに交際も、結婚もしたくなくなったのか、ダイバーシティだな・・・」という読者も出てきそうであるが、そこはそうとは言えないデータが存在する。30年以上、18歳から34歳の日本の男女の結婚意志そのものは変わっていないのだ(図表4)。

この意識の維持について、あえていろいろな解釈を試みる人もいるが、統計的に言えば、データ解釈の前提条件となるデータが大きく変更していないことは揺るがない。「お見合いが減ったから、それほど本意ではない結婚を強制されなくなったのだ」にもかかわらず、統計的な意識は変化しておらず、「どの程度本気の回答かわからない」と読むのも「エビデンスなき解釈論」となるため、いずれにしても、ダイバーシティだから未婚化だ、というには、エビデンスといえるものではない。

これは余談になるが、「鬼滅の刃」の空前の大ヒットをみるにつけ、同作品は家族愛(親子愛、夫婦愛、兄弟愛)の深さへの視聴者の共感が大前提となっている構成のアニメであることから、日本人に「家族」への強い愛着があることがビジネス的に証明された感覚がある。おひとりさま推しで儲かるビジネスの風潮がバブル期以降台頭したものの、そろそろその限界を「鬼滅の刃」の大ヒットが示しているのではないだろうか。

 


2.コロナで変わる未婚者の動き


 

さて、日本の人口問題の最大の壁ともいえる未婚化、非交際化について、実はコロナがかなりの影響を与え始めているという、「非交際化・未婚化を動かすコロナの姿」が見えてきている。

結婚サービス業界の動きが活発化しているのである。4月の緊急事態宣言以降、人々の実際の移動や対面での面会への気持ちに大きく制限がかけられる中で、ちょうど宣言から半年になる9月上旬、コロナ長期化についにしびれを切らしたかのように、非常に興味深い動きが発生した。

9月初め、婚活サービスのパートナーエージェント(埼玉県や福島県など、一部の自治体の結婚支援サービスへも参入・東証マザーズ上場)の株式が一時ストップ高(株価が急上昇したために売買に制限がかかる状況)と株価の急伸をみせた。同社はその直前、人気地方女性アイドルグループのメンバーを起用した広告動画のユーチューブ再生回数が100万回を突破したと発表している。
同社がこういった派手な広告の動きをみせたのは、実はコロナが影響している。緊急事態宣言解除によって、同社への問い合わせ数や来店予約数が増加し、夏には日別の資料請求件数、入会数などが過去最高に達する日もでた。同社による「婚活需要の拡大の兆し」の発表に市場が同調したのである。

また、恋愛マッチングサービス「Omiai」の運営会社であるネットマーケティング(東証1部上場)も株価を上昇させ、8月の新規会員数は過去最高(13万1000人)になったと発表している。結婚相談所にお見合い相手のデータを提供しているIBJ(東証1部上場)も、第2四半期(1~6月)業績が予想を大幅に超過する結果となっているが、これもまた、緊急事態宣言解除後、パーティ参加者の回復が予想を超えたことから生じている。結婚サービス業界の活況ぶりの紹介はこの辺にして、その活況を生み出した背景についての興味深い意識調査の結果を最後に紹介したい。

結婚相手紹介サービスのオーネットによる「コロナ禍における20代30代独身男女の結婚に関する意識調査」(6月末公表・サンプル数: 992 人:男性 496 人/女性 496 人)によれば、36.4%の男女が「(コロナにより)結婚意識が高まった」と回答している。男女双方、「非常に結婚したくなった」割合が10%を超えている。

高まった理由については、男女あわせて 61%が「一人でいることに対する孤独感や将来に対する不安感」、続いて 21%の男女が「誰かと一緒にいたい」を挙げ、この2つで82%という割合となった。

コロナによって「未婚化が進むのでは」といった懸念とは逆の動きが20代を中心に若い世代で起こっており、それが関連企業の業績に徐々に反映されつつあるというのが足元の状況となっている。

実は、コロナによる未婚化を心配する声は、ネット親和性が低くなる上の世代の結婚支援者(もしくはネット婚活が少ない時代に結婚した人々やメディア担当者)になるほど多く、その理由も「やっぱり最初は対面じゃないと不安って会員がいうので、どうしようもない」「だって(対面で)出会えないでしょ?」という、今の20代の他者へのファーストアクセスへの考え方からは、ほど遠い考え方に立脚している。

少子化の専門家としての見地からはっきりというならば、20代の婚姻率の上昇こそが出生数の未来を握っているため、上の世代の婚姻と少子化というのは切り離して考えて問題がない。

コロナの存在そのもの自体は歓迎されるべきでは決してないのだが、コロナによって特に若い世代が「男女の出逢いの大切さを再認識した」ことは非常に感慨深い。「まだ若いし、いくらでも出会える(はず)!」という、日本の男女の「出逢いに関する平和ボケ」からの脱却に、コロナは大いに貢献しているようだ、といえるだろう。

 

 

図表 《クリックして拡大》

 

天野  馨南子  (あまの  かなこ)
株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部
人口動態シニアリサーチャー
専門分野は、人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進。内閣府や自治体、公益財団、民間企業のさまざまなプロジェクトに携わる。
著書に、『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社・2019)等

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年8月号『DX : 先行する生活者、日本企業は追いつけるのか』に記載された内容です。)

スマートフォンの普及によりここ5年くらいの間にTwitterやInstagramなどのSNSが生活者、特に20代、30代の女性にとって空気のような普通の存在になってきました。商品やサービスの情報の入手先もTVや新聞ではなくSNS上の「声」に頼る人が増えているようです。リアルな生活圏と並行してSNS上にもう一つの生活圏が出現したと言ってもいいでしょう。いま日本企業が遅れていると騒がれているDX(デジタルトランスフォーメーション)はとっくに生活者たちの間で進行してきています。

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年8月号『DX : 先行する生活者、日本企業は追いつけるのか』に記載された内容です。)

今やツイッターやインスタグラムなどのSNSは情報収集・発信、知人との交流など日常の生活になくてはならない存在です。企業はSNSにどう入り共存していけばいいのでしょうか。お客様から商品の使い方を提案され、愛される商品を生み出しお客様と好循環な株式会社ワークマンの営業企画部 丸田純平氏にSNSの取り組みについてお話を伺った。

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年12月号『コロナの炙り絵@LIFE』に記載された内容です。)

既に人々は折り合いを付けながら「withコロナ」の暮らしをおくっています。先行きの見えない不安の中で、感染予防策とともにある新たな暮らし方や楽しみ方。わたしたちの消費は、なんだかんだしぶといものです。

 

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年12月号『アートで変える!』に記載された内容です。)


2種類のマーケター


 

マーケターには2種類のタイプがいる。1つは、データを鮮やかに駆使して生活者の求める最新のニーズを把握し、客観的データによって周りを説得し、PDCAサイクルを回しながら市場ニーズに対応していくタイプ。もう1つは、既存の概念に違和感を感じ、新しい価値観を持った商品やサービスを市場へと投げかけ、これまでにないライフスタイルを時間をかけて創造していくタイプ。

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年9月号『DXの虚と実 Do or Die?』に記載された内容です。)

古い業界や老舗企業を含むデジタルトランスフォーメーション(以降DX)に、長きにわたり先駆的に取り組み、いまは江端浩人事務所 代表・エバーパークLLC 代表として企業のDXを支援し、デジタル・アクティビストとしてDXの教育・啓蒙に取り組む江端浩人氏に、お話をうかがいました。

江端氏は、世界で初めてインターネット経由でデジタルカメラの写真データをオンラインプリントできるサービスを展開したDigipri(デジプリ)を1996年に起業、2007年に公開の「コカ・コーラパーク」はユーザー数1300万人に至りオウンドメディアのパイオニアとして注目されました。現在は、株式会社スポーツニッポン新聞社のCDO(チーフデジタルオフィサー)兼特任執行役員やiU情報経営イノベーション専門職大学の教授としてもDXの実践や人材育成に携わっています。

 

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年11月号『アートで変える!』に記載された内容です。)

2015年に監修した、アンソニー・ダンとフィオナ・レイビー『スペキュラティヴ・デザイン注1』(原題は『Speculative Everything: Design, Fiction, and Social Dreaming』)は、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のデザイン・インタラクション学科で教鞭を執った二人の著者による、10年に渡るデザイン教育の足跡と呼ぶべきものである。ダンとレイビーは、その後米国ニューヨークのパーソンズ美術大学に移り、現在はそこで「Designed Realities Studio(デザインされた現実)」[1]の共同ディレクターを務めている。

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年11月号『アートで変える!』に記載された内容です。)


アートという異次元



夕日が水平線めがけてゆっくりと腰を落とし、やがて見えなくなってしまう頃に出会える光と闇の境目。それを日本人は逢魔が時と表現しました。ささやかな照明しかなかった昔の人にとっては、日没後の暗闇はとても警戒すべきものだったに違いありませんが、現代に生きる私にとって、この逢魔が時は「訪れる闇に目が慣れずに一層暗く見えるわずかな時間、現実の世界と異次元空間とが繋がり魔物に出会ってしまう」そんな空想を駆り立てられる洒落た言葉に感じてしまいます。

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年9月号『DXの虚と実 Do or Die?』に記載された内容です。)


90年代の教訓



30年近く前の話から始めたいと思います。1993年にMichael Hammer & James Champy著「Reengineering the Corporation」(邦訳:リエンジニアリング革命)が世界を震撼させ、情報技術(IT)を活用して事業を革新する機運が起こりました。

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