楽しみながら仕事をするための生成AI活用術

<目次>
 1.働くことを楽しめているか?
 2.知性のあり方を変えるChatGPT
 3.ノンプロの強い味方:生成AIを活用した新たなキャリア形成の道
 4.時間を節約するための、ChatGPTの活用フレームワーク「4H」
 5.付録:ChatGPTによる簡易キャリア  カウンセリング(プロンプト付き)

1.働くことを楽しめているか?

突然ですが、「働くこと」を楽しめているでしょうか?「楽しい」「嬉しい」と感じることは、人によって違います。「人が動く」と書いて「働く」と読みますが、人が動くには2種類のトリガーが存在します。
①内発的動機:興味・関心・自己実現といった気持ちによる動機
②外発的動機:外部からの評価や金銭といったご褒美や報酬による動機

 同じことを体験しても「楽しい」「嬉しい」と感じる人と感じない人に分かれるのは、そのためです。
 本稿では、知性のあり方を変えるChatGPTにはどんなポテンシャルがあり、ビジネスをどう変えるかを考察したあと、AI時代に楽しく仕事をするヒントになるアイデアを、次の2つの視点から紹介していきます。
①ノンプロの強い味方:生成AIを活用した新たなキャリア形成の道
②時間を節約するための、ChatGPTの活用フレームワーク「4H」

 最後には、付録として、あなたの「楽しい」「嬉しい」を深堀りして、適職のアイデア出しをしてくれるプロンプトも付いています。
 是非お試しいただき、AI時代に楽しく仕事をするヒントにし、AI時代という荒波の中での航海を良いものにしていきましょう。

 

2.知性のあり方を変えるChatGPT

 2022年の11月にChatGPTが一般公開され、後戻りできない大きな転換を迎えました。ChatGPTはホワイトカラーのほとんどの職業に影響を与えるポテンシャルを持っています。いま私たちが真っ先にやるべきことは、ChatGPTに代表される生成AIの知見者の話を見聞きし、使ってみて、何がどこまでできるかを理解することです。その上で、自分が所属している業界や会社、事業にどのような影響があるかを理解するということに尽きます。
 その影響を踏まえ、仕事がAIに代替されたり影響を受けるリスクが大きい場合には、別の職業に移ることを考えることが推奨されます。
 一方でもし、職業の代替や影響が少ないようであれば、生成AIを使いこなせるようになり、with AIで仕事の効率を上げたり、AIをうまく使った新しい事業作りなどを考えるべきでしょう。
 ChatGPTは「知性のあり方」を変えつつありますが、約30年前にも同じような変化がありました。それは、Googleが開発した検索エンジンの登場による「知識のあり方」の変化です。
 彼らは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにする」というミッションを掲げ、辞書を引くことや記憶の詰め込みの意味を薄れさせ、「ググれば、ほとんどのことはわかる」という世界を作りました。
 その結果、知恵袋のような人は重宝されなくなり、教育においても詰め込み教育の意味が問われるようになりました。
 ただし、Google検索を使い「知識」だけ集められても、「地頭」に代表されるように「知性」までは補いきれません。その「知性」の領域を補いつつあるのが、ChatGPTに代表されるチャットAIです。
 戦略コンサルティングファームの面接試験では「フェルミ推定」という地頭を検査するための試験があります。「日本のマンホールの数は何個あるか?」のように知っているはずのない問い掛けをし、様々な仮説と共に推論をさせて、そのアプローチの仕方を面接官は見て、地頭がいいかを見極めるという試験です。
 地頭の要素を分解してみると次のような力になります。
①同じモノ・違うモノを集めたり、分離する力
②複数のモノを繋ぎ合わせストーリーを作る力
③外部環境から様々な情報を感じ、使える準備をしておく力

 このうち、①と②はChatGPTが得意とする領域で、③も膨大な数の先人が感じたことを記した文章をAIが学習することで、あたかも体験・経験したかのように説明できるようになっています。その結果、身体のないAIから自転車の乗り方のコツを教えてもらうことまでできます。つまり、①〜③までの能力を既にAIが持ち、今まで一部の人しか持ち得なかった「知性」を誰もが使えるようになったということを意味しています。
 実際に、ChatGPTの有償版のGPT4で、日本のデパートの店舗数をフェルミ推定させたところ、次のような思考ステップを経て、「160店舗」という推計が出ました(図参照)。

 日本百貨店協会が発表している2023年9月時点の発表によると、その数は181店舗で、かなり近い推計が出たことがわかります。推論の中身を見ても、地頭が良い人が備えている「考えるステップの切り方」と「各ステップでの推論の筋の良さ」を伺うことができます。
 こういった地頭の良さを持つChatGPTですが、今までのAIブームとは根本的に異なります。従来のAIブームでは、流行りの仕組みを使い始めるまでに様々なツールをインストールし、真っ黒の画面にコマンドをいくつも入力して下準備をする必要があり、エンジニアでないと難しいものがありました。
 ChatGPTに代表される生成AIは、LINEやMessengerなどでチャットをしたことのある人であれば、誰もが30秒ほどでログインし、使い始めることができるという直感的に使えるUIUXの良さ、ハードルの低さがあります。そのため、社会への浸透も早く、当時、ソフトウェア史上最速で1億人のユーザーを抱える記録も打ち立てました。
 GPTのような知性を、誰しもが簡単に使えるようになった今、新しいアプローチでのキャリア形成が可能になりつつあります。幼少期から持っている興味関心を、生成AIと組み合わせることで、プロも驚くような高品質のコンテンツを簡単に作ることができるようになります。

 

3.ノンプロの強い味方:生成AIを活用した新たなキャリア形成の道

 スティーブン・R・コヴィー博士が書いた『7つの習慣』の第二の習慣の説明の中で、「すべてのものは2回創造される」という話があります。
 すべてのものは、第一の創造として、まず頭の中で創造され、次に第二の創造として実際に形あるものとして創造される。第一の創造は「知的創造」、第二の創造は「物的創造」と言えます。
 子どもの頃、絵を描くのが好きだった、物語を書くのが好きだった、音楽を作るのが好きだったなど、人それぞれ興味関心をもつ領域はあるものです。そういう人は、第一の創造(知的創造)はできても、社会の中で人が欲しがるようなものにする第二の創造(物的創造)でハードルを抱えていることが多いです。
 「1万時間の法則」と言われるように、膨大な時間の専門的な訓練を積んだプロがその領域にはおり、ノンプロは安易に参入できませんでした。
 生成AIは、膨大な情報を学習しており、広く深い知見をもとに、領域によってはQCD(品質・コスト・納期)の観点でプロを圧倒することができるため、ノンプロの強い味方と言うことができます。

・イラストレーターのケース

 例えば、画像生成AIの「Midjourney」や「にじジャーニー」※1を利用すると、素人でも本格的なイラストがすぐに作れます。もはやオワコンではありますが、2024年(辰年)の年賀状に使えるような龍のイラストを作ってみると、1分程度で4パターンのイラストが生成できます。入力したプロンプトが幼稚園児でも書けるような平易でシンプルなものにも関わらず、アウトプットの質が極めて高いところがポイントです。

※1「にじジャーニー」
画像生成AIのMidjourneyをベースにアニメやイラストに特化して作られたサービス。月10ドルで利用可能。

 この絵を見た漫画家の友人曰く、「それぞれの絵を描くだけでも1時間以上かかるし、それに応じてコストも発生する。そもそも、ここまでの緻密さで描くこと自体が相当難しい。」と、舌を巻くほどでした。つまり、このイラストの領域において、QCDの観点から見れば、AIを活用するノンプロが専門家を圧倒できる時代になりつつあると言えます。
 QCDの観点は別にして、ノンプロが興味関心から、with AIで良質なコンテンツを作り、世の中に出す例として、次のような活用法も考えられます。

● noteで好きな領域を解説したブログの連載:好きな領域でブログ連載をする際、書きたい内容を伝え、アジェンダや本文の叩き台を作成してもらうことで、短時間で高品質のコンテンツを作るケース。

●仕事や生活に必要なスマホアプリの開発:ChatGPTをプログラミングの家庭教師として活用し、欲しいアプリ作りの伴走をしてもらうケース。アプリの企画から、実装、エラー時の相談、リリース時の疑問まで丁寧に教えてもらうことが可能。

●Udemyで好きな領域を教える動画作成:誰でも講師となって好きな領域の解説動画を作ることができるUdemyのコース作りに伴走してもらう。コースアジェンダや台本の叩き台を作ってもらうことで講師になる際のハードルを下げることが可能。まだ実用レベルではないが、ChatGPTやその他のサービスで、台本からPowerPointのスライドを自動的に作成してもらうことも可能。

 このようにコンテンツ作りのハードルが下げられれば、あとは、顧客からのフィードバックをもとに、第一の創造(知的創造)の質を高めることと、どこで・誰に・どう認知してもらうか?という部分が勝負になります。
 飛行機で顧客を目的地まで運ぶ際、機体の操縦はできないがフライトには欠かせないCAのように、AI時代には、従来のプロ(この例では機体の操縦)とは別の技能を持った人材が活躍できる時代と言えます。
 機体の操縦はAIによるオートパイロットの力を借り、乗客(自分の興味関心やコンテンツの受け取り手)の声に耳を傾け、必要なものを必要なタイミングで作り、供給していくマインドを持つことで、新たなキャリア形成の第一歩を作ることができます。
 日々、様々なジャンルで生成AIや、AIを活かしたサービスが生まれています。第一の創造(知的創造)を妄想で終わらせず、生成AIを色々と調べて試し、第二の創造(物的創造)を強力にサポートしてもらうことで、「従来のプロ顔負けのコンテンツを生み出せる」というマインドを持ち、行動しましょう。

 

4.時間を節約するための、ChatGPTの活用フレームワーク「4H」

 限りある時間。「やりたい仕事」も「やりたくない仕事」も、高速に進めることで時間を節約し、「楽しさ」や「嬉しさ」を感じることに時間を割くことができるようになります。
 4Hとは、時間を節約するためのフレームワークで「増やす」「減らす」「掘り下げる」「変化させる」の頭文字を取っています。4Hを活用することで、幅広い作業の時間を節約することができます。

4Hのフルバージョンの解説

https://www.udemy.com/course/chatgpt_course/

※4Hのフルバージョンの解説はUdemyで提供している「【プロンプト テンプレ+練習問題付き】 ChatGPTをフル活用する4Hと、生産性10倍アップのための基礎〜応用の勘所」を是非ご活用下さい。)

それぞれの活用方法を簡単に見ていきましょう。

①増やす

 活用事例としては、案出し・メニュー作成・ソースコード作成・理解度を問う問題の作成、画像の生成などがあります。
 例えば、社内勉強会でのアジェンダの叩き台を作ってもらったり、ダイエット用の運動プログラムの作成、社内のセキュリティ教育の理解度を問う4択問題の作成まで、簡単に作れます。
 アイデアを一緒に考えてもらうこともメリットですが、叩き台となる文章を書いてくれるので、タイピングの時間が削減できるのも大きなメリットと言えます。また、理解度を問う問題の作成では、正解の選択肢よりも、不正解の選択肢を作る時の方が脳内エネルギーを必要とします。その部分を代行してもらえることも大きなメリットです。
 また、有償版になると、DALL-E3を使えるようになり、作りたいイメージを文章で入力すると画像を生成してくれます。PowerPointの挿絵の生成や、カスタマージャーニーを考える際、顧客の生活シーンを生成してもらい商品が使われるイメージの解像度を上げるなど、アイデア次第で、様々な場面で画像生成も活用できます。

②減らす

 活用事例としては、要約・字数制限に合わせた圧縮、見出しやタイトル案を作ってもらうなどがあります。
 例えば、長めのニュースを貼り付けるとGPTが要約してくれ、クイックに理解できたり、少し面倒な報告書のエグゼクティブサマリーを作成してもらうこともできます。叩き台を書いてもらえるため、ゼロから書くよりも時間が短縮できるのも嬉しいポイントです。
 また、本文をキャッチーな一行にして見出しやタイトルを作ってもらうことも効果的な使い方です。

③掘り下げる

 活用事例としては、背景や原因など「なぜ?」を解説したり、海外も含めた先行事例の深掘りなどがあります。
 例えば、なぜテスラの時価総額はトヨタの3倍にまでなっているのですか?と背景を掘り下げてもらったり、自分が所属している業界でのAI活用の事例を提示してもらうことができます。

④変化させる

 活用事例としては、理解が難しい文章を中学生にも分かる説明に変換したり、外国語への翻訳などがあります。
 例えば、量子コンピューターやブロックチェーンの仕組みといった理解しづらい専門的な説明文を子どもでもわかるように咀嚼したり、日本語のプロフィールを英語に変換したりすることができます。

 

 以上が4Hの概要になります。それぞれ個別に使うのも便利ですが、組み合わせも非常に便利です。「減らす」×「変化させる」の例で具体例を出すと、外国語の長文を日本語で要約してもらう例があります。
 例えば、コンサルファームが公開している英語のレポートをChatGPTに読ませ、それを自分が知りたい観点で要約させて日本語にしてまとめてもらうことができます。
 この組み合わせを使うことで、海外の論文を日本語で短時間に理解することもできるようになります。この手法を使えば、どんな言語の論文やニュースでも、短時間で母国語で理解することができます。
 このように、4Hを意識すると、ChatGPTを幅広く活用でき、いま行っている仕事の省力化や省人化、無人化を進めることができます。自分が「楽しさ」や「喜び」を感じる仕事ができることに時間を使えるように、4Hをフル活用してQOLを上げていきましょう。

 

5.付録:ChatGPTによるキャリアカウンセリング(プロンプト付き)

 本稿の冒頭で触れた通り、「楽しさ」や「嬉しさ」といった感情を感じるトリガーを見つけなければ、いまの仕事を楽しくしたり、適切な仕事を見つけて転職することは難しい。
 そんなとき、ChatGPTに聞いてみるのも一手です。
 例えば、ChatGPT(有償のGPT4を推奨)にログインし、下記のプロンプトを入力すると、簡易的な職業カウンセラーとして、あなたの内面を掘り下げて、適職を理由と共にリストアップしてくれます。このリストをヒントに、楽しく働くための転職も考慮に入れると良いでしょう。
 あなたがいま従事している仕事が適職に入っていて、もし楽しさを感じていないのであれば、何がその原因かを考え、部署異動やチーム異動、人間関係の改善など、対策を講じると良いかもしれません。
 是非、AI時代に仕事を楽しめるようになる、一助として活用いただければと思います。

https://docs.google.com/document/d/1bc8biEEQhqIdkO-y26PA64p_XNnYphb8_dXsKxLC8-k/edit

※上記URLからGoogleドキュメントにアクセスし、プロンプトをコピーできます。ご活用ください。

#ロール定義
あなたは有能な職業カウンセラーです
#目的定義
自分が何に楽しさを感じるかを掘り下げ、適職を探るための質問のラリーを行い、私には何の職業が向いているのか深めて提案を行なってください
#作業指示
・序盤の質問では、何に楽しさを感じるかを掘り下げる質問をしてください
・掘り下げる際は内的要因や外的要因といった、類型化も行って下さい
・その後、適職を探るために質問をしてください
・回答に対して10回、的確な質問を返して、適職について深めてください
・回答は番号で答えられるように選択肢に番号を振ってください
・選択肢は5つ以内で提示してください
・選択肢の中に適切なものがない場合に備え、自由回答も可能にして下さい
・質問1〜10まで最初に何問目の質問かを書いてください
・回答を誘導しない程度に幅を持たせて選択肢を用意してください
・問いは一度に出さず、一問ずつしてください
・一連の答えの結果を踏まえ、私の特性を短い文章で要約し○○タイプと類型化し、向いている職業を10個、表形式でリストアップしてください
・表には「職業名」と「なぜ私に向いていると言えるのか、その理由の解説」という列を作って下さい

 

倉嶌 洋輔 (くらしま ようすけ)
株式会社Focus on 代表取締役

1985年東京都出身。明治学院大学法学部卒。グロービス経営大学院修了(MBA)。新卒で株式会社ワークスアプリケーションズに入社。その後、スマホアプリの開発企業やSEの企業を経て、株式会社Focus on​(https://www.focuson-inc.com/)を設立し、代表取締役に就任。AIコンサルや、ChatGPTの研修講師、NewsPicksのプロピッカー、オンラインサロンLife Vision Lab.の主宰など、様々な活動を進めている。

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