「当たり前」を疑うことで見えてきたこと:コロナ禍の2年に挑戦を続けた WEBメディア『ウィメンズヘルス』の試み

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2022年2月号『やってみた』に記載された内容です。)

2020年4月7日に発令された1回目の緊急事態宣言。私たちウィメンズヘルスは、その2日後から毎朝8時にインスタライブをスタートし、100日間で毎日100人のフォロワー増につながった。さらに同年秋には、大型のオンラインフェスを開催し、1,700人を集客。

2021年にはメディアとしてのあり方を大転換するなど、コロナ禍の2年間で次々と新しい挑戦を続けてきた。ここでは、私たちの取り組みと、それによって得た学びを共有していこうと思う。

 


「緊急事態宣言だからこそ、私たちの出番」で新企画をスタート


 

ウィメンズヘルスが日本上陸から終始一貫してミッションとしてきたことは、女性たちの心と体を健やかにする情報と機会を提供すること。「新型コロナウイルスによる外出自粛、緊急事態宣言は、多くの人の心と体の健康を損なう可能性がある。

それならば、読者が自宅にいながらにして運動する習慣を提供するべきだ」。そんな考えから、緊急事態宣言発令の日にインスタライブでのワークアウトライブ配信企画が決定。4月9日朝8時から、日曜祝日も含め100日間休まずにインスタライブを配信し続けた。

 


既存読者のために始めた企画で、フォロワーが1万人増える



ワークアウトライブの仕組みは、編集部のエディターが持ち回りで、毎朝8時にヨガインストラクターやフィットネストレーナーとコラボライブを行い、30分から1時間の運動を読者とともに行うというもの。

ウィメンズヘルスのアカウントをフォローしておけば、毎日人気トレーナーたちのレッスンを無料で受けられるとあって、参加者は毎日数百人。さらにうれしい驚きだったのは、毎日フォロワーが100人ずつ増えたことだ。この施策を通じて、緊急事態宣言中にインスタグラムのフォロワーは1万人増えた。

この経験から、それまでフィットネス=スタジオなどの場所に集まって行うもの、という思い込みから解放され、オンラインでも十分、読者に満足してもらえるイベントを実施できるという自信を得た。

 


無料インスタライブから、有料オンラインイベントへ



100日間のワークアウトライブで、オンラインフィットネスの手応えを感じた後、次なる挑戦は無料で提供してきたサービスを有料化すること。そして前年まで1,200人を集めて開催していたフィットネスイベントを、オンライン開催することだった。

無料のインスタライブを楽しんでくれたファンに、参加費を払ってもらえるのか。不安はあったものの、結果的には10月に開催した有料のオンラインフェス「LOVE BODY+」は1,700名を集客。協賛企業も多数獲得でき、ビジネス的にも成功に終わった。

まだオンライン配信型のイベントの実績が少なかったこの頃、配信作業などを外注すると高額なコストがかかり、イベントの黒字化が難しいという問題があった。そこで編集者としての挑戦となったのが、すべてのエディターがビデオカメラやスイッチャーを使いこなし、配信のプロになるということ。

試行錯誤しながら事故が起こらない配信方法を編み出し、マニュアルを作成し、ウィメンズヘルス編集部のスタッフは全員が配信技術を身に付けた。“自分たちが未経験の技術は外部のプロに頼むもの”。そんな「当たり前」を覆すことで、その後継続することになった各種オンライン配信イベントも、低コストでの実現が可能になった。

 


2021年春。PV至上主義を脱却し、編集部員がEC運営にもコミット



この2年の間で、最も大きな決断は、編集部のあり方を変えることだった。WEBメディアは記事を多く作り、PVを伸ばすことが重要。そう信じてきた「常識」を疑ってみた。情報が溢れているこの時代、読者が私たちに求めているのは果たして大量の記事なのだろうか?

編集部員で議論し、読者調査も行い、わかったことは、ウィメンズヘルスのファンであればあるほど、記事よりもイベントへの期待が高いということだった。

個人がメディア化しているこの時代、それまでの広告モデルで走り続けることにも疑問を持ち、読者が欲しいモノ、体験したいコトを揃えたEC「Women's Health SHOP」をグランドオープンすることを決定。編集部員が制作する記事の本数を半分に減らし、その分のリソースをECの制作、運営に注ぐことにした。

ECのグランドオープン以降、実施したオンラインイベントはフィットネスに留まらず、デリケートゾーンケア、瞑想、アーユルヴェーダ、そして2022年1月には参加費45,000円のファスティングイベントも実施、70名を超える参加者を集めた。

集まってのイベントが開催できないという逆風を逆手に取り、インスタライブ、有料オンラインイベント、そしてそれを加速していくためのECのオープンと、途切れることなく新しい取り組みに挑んできた2年間。記事作りに関しても、「マス受け」は狙わないと決め、ウィメンズヘルスらしさにこだわった質の高い記事に集中することで、結果として本数を減らしてもページビューは増えている。

誰にでも、最初はできなくて当たり前。できない、ではなく、まずはやってみる。そんなチャレンジャー精神を大切に、私たちウィメンズヘルスはこれからも、メディアとしてのあり方を変えていくはずだ。

図表 《クリックして拡大》

 

影山 桐子(かげやま きりこ)
Women's Health編集長。大学卒業後、ウェブデザイナーを経て、1998年にアシェットフィリパッキジャパン(現ハースト婦人画報社)に入社。独立後、フリーエディターとしてファッションやライフスタイルを中心としたメディアで活躍。2017年、株式会社ハースト・デジタル・ジャパンにおいて「ウィメンズヘルス」日本版立ち上げ準備に加わり編集長に就任。

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