ブランド生態調査2019 (3):顧客はライバル企業の両方が好き(前編:ANAとJAL)

 

■ ANA、JAL

■ 花王、ライオン

■ 明治、森永

■ Yahoo!、Google

■ Amazon、楽天

■ スターバックス、ドトール

■ アサヒ、KIRIN

 

いま挙げたこれらのブランドは当事者からも世間からも「ライバル関係」にあって激しく競争していると見られています。顧客についても例えば、ANAファンはJALが嫌いか無関心、JALファンはANAが嫌いか無関心、と勝手に想定していないでしょうか。ブランド生態調査のデータはこの仮説の真偽を教えてくれます。驚くことに、この仮説は上のライバルブランドに関してはことごとく不成立どころか、真逆な関係が成立しているのです。

 

1. ライバル? NO!:多くの顧客は「どちらも好き」

 

全サンプルではANAファンは5%しかいないのにJALが好きと挙げた人だけに限定すると28%もANAファンがいるのです。森永ファンの67%が明治ファン、ライオンファンの51%が花王ファン、・・・という具合です。ブランド生態調査ではどの程度ANAファンがJALファンと重複しているかを測る指標として「ブランド親近度」というものを考案しました。それは以下のようなものです。


ANAとJALのブランド親近度
=《JALファンの中のANAファンの比率》÷《全サンプル中のANAファンの比率》
=28÷5.3=5.2


これは、JALファンの中のANAファン濃度が全体のANAファン濃度の5.2倍濃いということになります。面白いことに、JALとANAを逆にして計算しても数値は変わりません。小数点以下が煩雑なので100を掛けて表すとJALとANAの親近度は522になります。この親近度はすべてのブランドのペアについて計算ができて、全ペア中最大なのが何と明治と森永の5613で、通常の56倍濃いことになります。

企業

親近度

 ファン濃度の倍率
ANA × JAL

522

5倍
花王 × ライオン

1035

10倍
明治 × 森永

5613

56倍
Yahoo! × Google 718 7倍
Amazon × 楽天 443 4倍
スターバックス × ドトール 610 6倍
アサヒ × KIRIN 2788 27倍


表1に冒頭で挙げた各ペアの親近度をまとめましたが、さらに驚くことに,ほとんどのケースで、お互いが全ブランド中最も親近なブランドなのです。ライバルだと思って目くじら立てているのはブランド側の人たちだけで、生活者の多くは「ANAもJALも好き」、「花王もライオンも好き」、「明治も森永も好き」と言っているのでした。


これは調査データに現れた動かしがたい事実ですが、なぜこんなことが起こっているのか、「好きな理由」も書いてもらっているのでそれらを手がかりにこの現象のWHYに迫ってみました。


例として、冒頭から採り上げているJALとANAをこの前編で、花王とライオンを後編で採り上げることにします。

 

2. JALファンの3割はANAも好き

 

「クルマ・交通」の領域で「好感をお持ちの企業や商品の名前を3つまで挙げてください」と聞かれてANAとJAL両方を挙げた人は81人います。これは、ANAを挙げた393人の約20%、JALを挙げた296人の30%弱になります。この81人が「好感の理由」で何を言っているかを見るとなぜ両方が好きかが分かるはずです。回答は大きく2つのグループに分けられます。


<1>ANAとJAL2つに対して全く同じコメント …29件


「安心」と「安心」、「王道」と「王道」など一言だけのものから、両者に対して「日本企業だし安心して乗らせてもらっている」、「昔からあるので。やはり乗るといいなと思います」などとやや長いものまでいろいろとあります。

やや誠意に欠けた対応と見ることもできますが、クルマ、鉄道、航空会社などの数ある名前の中からこの2つをあえて書き込んだということはそれなりの重みがあります。この人たちの頭の中ではANAとJALが1セットになっていて「どちらもいい」、「どちらでもいい」ということかと思います。その理由をグループに分けると次のようになります。

 

CA、機内食などのサービスがいい

12

日本の、大手

6

安心・安全

その他

6

 

どうも、安い海外の航空会社や国内のその他の格安の航空会社がもう一方にあってそれよりいい、という人が多いということのようです。

 

<2>それぞれ違う理由で「好き」 …41件


ANA、JAL両方が好きでもその理由が違う、という回答です。いろいろとあるのでその代表例を5つ以下に挙げます。

 

ANA

 JAL

◆サービスが全体的に整っている

◆高級感がある

◆国際線のサービスが良い。

◆客席が広い。 

◆最寄りの空港で使えるから

◆嵐がCMをしていたから
◆マイレージの充実 ◆きめ細やかなサービス 
◆制服がステキ。青のラインがはいった飛行機がいい。サービスがステキ。  ◆制服かわいい。社員全体に一体感がある。

 

ANAとJALでコメントに際立った特徴はありません。ただ、ANAは「マイル」、JALは「嵐のCM」が目立っています。ここでも多少程度の差はあるものの「どちらもいい」という傾向に変わりはないようです。これらのほかに無回答が11件ありました。

 

 

3.若年層に多い「どちらも好き」:なぜ?

 

では年齢別の比較をして見ましょう。図1aと図1bはそれぞれANAとJALの年齢分布です。ANAが60歳以上の男性、JALが50代と60歳以上の女性にファンがやや多い以外は大きな違いはありません。では「両方好き」はどうでしょうか。


図1cがその分布です。前二者とはまったく違って、29歳以下が26人と全体の3分の1を占めていて際立っています。その26人の平均年齢は23.6歳、そのほとんどが独身で一人住まいの学生か若手社会人。おそらく飛行機に乗り始めてまだ日が浅い人が多く、「ANAとJALはともにちょっぴり高嶺の花」というのが実態のようです。


クリックして拡大(図1a・b・c)

というわけで、ANAとJALの親近度の高さを支えている中心は平均23.6歳の26人の若者だということが分かりました。彼らは年齢からしても航空利用の経験が比較的浅く、この時期に強い感動体験を提供することにより将来どちらかの熱いファンに育つ可能性は大きいです。


蛇足ですが、もう一つ注目すべきは「若者のクルマ離れ」現象でしょう。クルマ・交通の領域でクルマを差し置いて3つのうち2つの枠をクルマ以外のブランドで使っているだけでなく、もう一つの枠でクルマを挙げた人は26人中5人しかいませんでした。クルマには余り関心がなく、飛行機に乗るならANAかJALのどちらでもいいからどちらかに乗りたい、ということのようです。

(後編「花王とライオン」に続く)

 

 

片平 秀貴 (かたひら ほたか)
丸の内ブランドフォーラム 代表
2001 年、「丸の内」ブランド再構築のお手伝いがきっかけで丸の内ブランドフォーラム(MBF)創設。
「社会に笑顔の循環をつくる」の信念のもと、同志とブランド育成の勉強と実践を続けている。

丸の内ブランドフォーラム

URL: www.mbforum.jp

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