【イケメン男子CM考】現代に生きる男の理想像

従来は女性向け商品として女性タレントが起用されていた、白物家電や加工食品・調味料等のCMで、イケメンタレントを多くみかけるようになった。

特に最近は、シャンプーなどトイレタリー商品のCMでも優しげなイケメン君がこちらを見つめてくる。さて、このようなイケメン男子CMが増えている背景を、㈱博報堂キャスティング&エンタテインメントの明海氏とともに考察する。

女性向け商品にイケメンタレントが使われるようになった背景には、「目立つ」ことと、「女性好感」を誘うことの2つの効果があるようだ。イケメン×女性商品、の取り合わせが視聴者をハッとさせ、露出量以上の効果があるのでは、と明海氏は分析する。
また、キレイな女性が素敵に宣伝しても、受け手の女性にとっては‘ちょっとウソっぽい’と感じる一方、憧れの存在であるイケメン男子に言われると、素直に耳に入ってくることもある。

広告主である企業側の視点としては、「女性心をつかむためには男性タレントを起用した方が効果的」、ということで、イケメン男子のCM露出度が高まる傾向にある。

とはいえ、目立つためには希少性があることが大事で、今後女性商品へのイケメンタレント起用率が高まってくれば、相対的なインパクトは低下するであろう。


イケメン男子CMは男女均等のあらわれ!?
そもそもこの傾向はいつごろからあるのだろうか。社会で活躍する女性が増えていく一方で、仕事を抱える女性にとっては、家事を男性にももっとやって欲しいという要望も大きくなっている。

願わくば、自分と同じ目線で家事を考えて欲しい、そう女性は思っている。また、CMで男性が活き活きと家事をしているところを表現することは、女性の共感を得るだけではなく、新しい男性観の提示でもある。

これは最近増えている、結婚しない男性へのメッセージ(“素敵な男性=家庭的な男性”なので、家庭的側面を見せれば女性にもてますよ!)を含んでいるともいえる。

「うちの夫は全然家事をやってくれない」などの男性への不満のかたわら、男性タレントのCM起用によって購買力の高い女性に火をつけて、さらに男性に「新しい男性像」のあり方として、やる気をたきつけるという効果もあるのだ。

実際、起用された男性タレントのイメージ、タレントとしての価値が上がっているとのことで、ここからも、「新しい男性像」、つまり家事も何でもマルチにこなせるのが素敵男子という認識が広く受け入れられている、そんな時代であることが分かる。


イケメンの定義
ここで少しイケメンの定義について考えてみたい。「男性の女性化」「女性の男性化」と言われて久しいが、最近のイケメンの定義はこれまでのガッチリマッチョに対して線が細い、ある意味女性的なイケメンが受けているらしい。

なるほど、白物家電や調味料、トイレタリーで見かける男性タレントも、物腰やわらかな、やさしいイメージのタレントばかり。自分を主張し、俺についてこいタイプではなく、「運動してるのかな?」と疑問を持つほど線の細い、あっさりしたタイプが今時のイケメンと言えるかもしれない。

‘カッコいい’と、‘イケメン’とはどうも違うようなのである。肩肘はって生きていくより、争いを避けてうまい具合に丸く収めるタイプ、がイケているらしいのだ。

これは女性の社会進出に伴い、女性が強くなり、頑張りもきくようになったため、男性に力強さを求めなくなったからということもいわれている。

また、その一方で男性が控えめになってきており、昔のリードしていくタイプの男性から、女性に優しく寄り添うタイプの男性がもてはやされるようになっている。男性の方にも、女性にモテたいからこうした風潮に合わせたいという思いもあるらしい。

ちなみに、表は30代女性に人気のある男性タレント上位10人(グループ含む)である。筋肉質のガッチリタイプというよりは、物腰やわらかなタイプが多くないだろうか。

 
男性は、イケメンタレントCMをどう見ているのか?
さて、そのような女子力男子が増えていく中で、男性は、イケメンCMをどのように見ているのだろうか。意外なことに、20~30代の男性の評価は高いといわれている。そこには「自分も素敵に家事をこなしてみたい」という思いがあるのではないだろうか。

これまでの男性の家事負担は、女性の理想だったが、だんだん男性にとっても家事負担に抵抗がなくなっている。そういう意味では、男性タレントのCM起用は「時々主夫」になることへの応援メッセージ的な要素でもあるのではないだろうか。

これは推測の域をでないが、イケメン男子CMの肯定的な副産物でともいえる。明海氏によると、今のところ、女性向け商品CMへの男性タレント起用は全体の10%程度だそうである。

ただこの流れから鑑みて、今後、もっと広いジャンルの商品にも及んでいくことだろう。例えば、今まで女性タレントが起用されていたスイーツなどの分野にも、希少性との兼ね合いはあるが、男性タレントの起用はある程度広がっていく可能性がある。

そう考えると、今の日本は男女意識のあり方のターニングポイントにきているといえる。いまでもイクメン男子という言葉はあったが、さらに法整備や政策のあり方から育児休暇をとる男性も増えてくるだろう。

本当の意味での男女参画社会の実現に近づきつつあるのかもしれない。イケメンCMは、そんな社会を先取りしていると言えるのかもしれないが、ふと、男性らしさ、女性らしさという概念はこれからどうなっていくのか?と考えてしまうのである。


取材協力:明海かつら氏 (株式会社博報堂キャスティング&エンタテインメント  キャスティング2部 部長)


松風  里栄子  (しょうふう  りえこ)
株式会社インターリテラシー Sensing Asia 代表
博報堂MD 戦略室 ブランディングディレクター、事業戦略とブランド戦略のコンサルティングを行うコーポレートデザイン部部長、博報堂コンサルティング 執行役員、エグゼクティブマネージャー を経て現職。専門分野はマーケティング戦略の構築および実施支援、CMO、マーケティング組織改革、M&A、ターンアラウンドにおけるブランド・事業戦略構築、グローバル市場参入支援。新規事業開発、新ビジネスモデル構築など。日本マーケティング協会 Marketing Horizon誌編集委員。

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