繋ぐことば

第4回

山が高ければ裾野が広くなる

2014年6月、私は第17代日本卓球協会の会長に就任しました。ここでは私がスポーツの世界で感じたこと、印象に残ったことをいくつかお話ししたいと思います。

今回は「山が高ければ裾野が広くなる」というお話です。就任直後のスポーツ団体のパーティで、サッカー協会の岡野俊一郎さんが私のところに来られて、「藤重さん、山が高ければ裾野が広くなります。裾野が広くなっても山は高くなりません。世界ナンバーワンの選手を育ててください」と言われました。この言葉は非常に強く私の印象に残りました。そこで私は会長としての3つのビジョンを掲げた中で一番目に「世界ナンバーワンの選手を育成すること」を挙げました。世界ナンバーワンの選手を育成することで私がやるべきことは何か。すでに赤羽にはナショナルトレーニングセンターができており、選手強化のための十分な環境が整っていました。そこで私のすべきことは「世界で武者修行だ」と思い、海外で世界の強豪選手(中国、ドイツ、スウェーデン、台湾、韓国等)と戦う機会を数多く実現することに力を注ぎこみました。協会の予算確保も会長就任時当時から比べ3倍になり、選手に海外遠征の多くの機会を提供することができました。海外で戦うということは強い選手と戦うということだけではなしに、ストレスのかかる国から国への移動や必ずしも十分ではない海外での食事や宿泊環境などにも耐えて戦い抜くという精神面での強さも鍛えられます。また、選手へのサポート体制の充実も必要です。世界でナンバーワンになるということは本人の努力だけでなく、サポートする人の努力との結集であり総合力なのです。

また、海外遠征だけでなく、日本でも世界の強豪選手と戦える機会を作ろうと卓球プロリーグのTリーグの創設に尽力しました。

今、スポーツ界ではうれしいことに、昨年のオリンピック・パラリンピックで多くのメダリストが誕生したのをはじめ、ゴルフやテニスやプロ野球メジャーリーグでも世界で活躍するトップアスリートが出てきて、そのスポーツが盛んになっています。

世界ナンバーワンを目指す!!このことの必要性はビジネスの世界でも全く同じです。今、日本企業に最も求められていることは世界ナンバーワンブランドを作り上げることだと思います。そのためには、かつてのように、欧米に追いつけ追い越せというアプローチではなく、彼らの持っていない強みを自らの知恵と工夫で作り上げ、世界のマーケットで勝負していく勇気を持つことだと思います。そして、勇気を持って挑戦する人や企業を強力にサポートする体制を、これも勇気を持って作り上げていくことが必要だと思います。日本でナンバーワンではなく、世界でナンバーワンを目指す強いマインドが今の日本に最も求められていることだと思います。挑戦を尊び、失敗を容認していく文化を作り上げていくことです。世界を見ないで日本でナンバーワンを目指すという内向き志向はやがて行き詰まり世界に取り残されてしまいます。

『MARKETING HORIZON』の読者からナンバーワンのビジネスマンや企業が多く出てくることを切に期待しています。そのことが閉塞感の高い現在の日本を救うことになると思います。