巻頭言

中年という絶滅危惧種

「中年」はもはや幻想の生き物です。

あなたの周りに40~50代の方はいますか。その40~50代の方々は「中年」っぽいですか。ご自身が該当する方もいらっしゃるかもしれません。その場合、あなたご自身は「中年」を実感することはありますか。
昭和、平成、令和と経て、どうも最近は中年らしい中年が減ってきたような気がします。今回の特集テーマはまさにそのような思いに端を発しました。
中年層に限らず、シニア層も含め、近年、当事者における年齢意識は薄れてきています。いわゆる性年代でのターゲット設定が既に意味を成しにくいという実感は多くの読者の方が経験済みでしょう。
加齢に伴う身体変化は実感しつつも、価値観や生活意識は大きく変わることなく過ごす毎日。そして、ある日突然目の前に現れる、各種割引や制度などの「シニア」な現実。そこで初めて「そうか、そういう年齢か。わたしはとっくに中年だったのか」と気付く人も多いのではないでしょうか。
ライフステージや働き方が多様化し、ビジネスシーンもカジュアル化が進んだ今、中年層に該当する年代の人はいるけれど、いわゆる中年はもはやいないのではないか。若いときの価値観やライフスタイルのその後は、すぐにシニア的な生活になるのではないか。
これが本号の仮説です。あなたなりの中年像を頭に思い浮かべながら、さまざまな視点から見た中年層の実態をお読みいただければと思います。

本誌編集委員長 ツノダ フミコ