無意識に人はブランドを選んでいる:想起されなければモノは買われない

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年3月号に記載された内容です。)

コモディティ化が進み、業種・業界・規模問わずブランドを中心においてマーケティングを考える企業が増えてきている中でブランドの管理方法に課題を感じている企業も多いと感じています。弊社はブランドが生活者に浸透することが”売れ続ける仕組みづくり”=マーケティングと考えており生活者にどの程度ブランドが浸透しているかを測定する為、早稲田大学の恩藏直人教授と共にEvoked Set共同研究プロジェクトを発足しました。プロジェクトで実施した調査事例をご紹介します。

 


購入時に思い浮かべるブランドは2ブランド以下?


 

生活者はカテゴリー内での購買を検討する際、無意識的にブランドを想起しています。ただし、カテゴリー内で想起されるブランドの数は平均して2個以下という結果がネオマーケティングのエボークトセット調査で分かりました。

図表1は各カテゴリー別にみた「知名集合(思い浮かべるブランド)」「想起集合(購入時に思い浮かべるブランド)」「推奨集合(お勧めしたいブランド)」の平均ブランド想起数となっております。カテゴリー内でのトップ2以内に入ることは購入されるブランドとして重要ということがわかります。一方で数多くのブランドが混在する中でトップ2を取ることは時間もコストもかかり、ブランドの成長戦略として課題が多いのも事実です。

 


サブカテゴリー戦略


 

ブランドの成長戦略の1つとしてカテゴリートップを狙うのではなくサブカテゴリーをみつけ、サブカテゴリー内でのトップを取りにいきサブカテゴリーを育成しようと考える企業が増えています。図表2は自動車(カテゴリー)調査をした結果となります。

自動車の想起集合(購入時に思い浮かべるブランド)を見ると、トヨタが圧倒的にカテゴリートップを取っていることがわかります。また、三菱自動車は知名集合と比較して想起集合が少ないことが特徴的で、想起集合に入らない理由を解明するかサブカテゴリートップを狙う戦略が適していると考えられます。図表3は同様の調査方法で電気自動車(サブカテゴリー)をテーマとした調査結果です。

電気自動車では、想起集合でみるとトヨタがトップであるものの日産自動車が2位に浮上しトヨタと近似値になっています。自動車カテゴリーでは出てこなかったテスラも5位につけており、10位だった三菱自動車は4位に位置しています。このようにカテゴリートップを狙うだけではなく、サブカテゴリーをつくり成長させていくことが成長戦略上重要な手段となっています。

 


サブカテゴリーの発見と育成



サブカテゴリーを見つける手段としては、機能的な価値・情緒的な価値・デモグラフィック属性・価格(一般・プレミアム)などでサブカテゴリーを作ることも考えられます。また、自社のブランドが選ばれている理由を把握し、選ばれている理由を生活者が購入する際のエントリーポイントとして、コミュニケーションすることでブランドを育成する手段も考えられます。機能性ヨーグルトの想起理由をご紹介します。

図表4~6は、テキストマイニングツール(https://textmining.userlocal.jp/ )で分析した結果となります。明治プロビオヨーグルトR-1は、免疫力を高めることへの期待、森永ビヒダスはビフィズス菌自体の摂取、明治プロビオヨーグルトLG21では、ピロリ菌への対策への期待が理由として目立っています。

R-1は「強さ引き出す乳酸菌」をベースにマーケティング活動を行っており、免疫力を上げたいと思った際にも想起されやすいブランドとなっていると考えられビヒダスはビフィズス菌を摂取したいと思った場合に想起されやすいブランドとなっています。

ヨーグルトカテゴリーにおいて、免疫力向上自体が注目されればR-1は優位な立場に立ちやすくなりビフィズス菌注目度が改めて増すことで森永ビヒダスは売上シェアが伸びる可能性があり、ピロリ菌対策の注目度が高まればLG21の売上が伸びる可能性があります。成熟市場の中カテゴリー単体での成長は難しく、サブカテゴリーをつくり・拡大することが重要なキーワードとなります。まずは自社ブランドが生活者のマインドシェアをどの程度取れているかを測定することから始めてみてはいかがでしょうか。

図表 《クリックして拡大》

 

恩藏直人教授コメント:

消費者は様々なブランドを知らず知らずのうちに分類し、頭の中で類型化しています。マーケティングでは、それをブランド・カテゴライゼーションという枠組みで整理しています。私たちは、その分類の一つである「想起集合(evoked set)」に注目し、共同研究に乗り出しました。

消費者が製品やサービスの購入を考えたときに買いたいと思う「想起集合」は、市場シェアや認知率などとともに、きめ細かいマーケティングを実施する上で貴重な指標になるはずです。「想起集合」に関するデータを蓄積、分析し、様々な提案をしていきたいと考えています。

 

恩藏 直人 (おんぞう なおと)
早稲田大学商学学術院教授/早稲田大学常任理事
主な研究テーマとして、ブランド戦略、製品戦略、市場参入戦略、センサリーマーケティングなど
早稲田大学商学学術院長、商学部長、公認会計士試験委員などを歴任

株式会社ネオマーケティング
事業内容:生活者起点のマーケティング支援事業
「人の心を満たす商品・サービスがあふれる社会」をつくることをビジョンに持ちリサーチサービスで生活者を理解し、デジタルマーケティングやPRでマーケティング施策を実行・改善を行い一気通貫でマーケティング活動を支援エボークトセット調査をはじめ、様々なマーケティングソリューションを開発中。
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