マーケターTwitter活用のすゝめ

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2020年8月号『DX : 先行する生活者、日本企業は追いつけるのか』に記載された内容です。)

Twitter社で働き始めて、早いもので6年が経ちます。利用者として登録したのが2009年3月らしいので、社員として利用している期間の方が長くなろうとしています。入社以前は、広告代理店でストラジックプランニング業務に携わっていたので、「マーケターにとってTwitterはどのような存在か」というテーマに、まさにこの6年間ずっと向き合い、心血を注いてきました。


Twitter上の会話の重要性




世の中で何か出来事が起こると、Twitterでもその出来事について会話が繰り広げられます。世界的なニュースから、自分の散歩中の小さな発見まで、とんでもなく多岐にわたるんですね。それらに他者解釈や解説が繰り広げられることで、あらゆる視点から物事を捉えられるようになるのが大きな醍醐味です。たまたま電車の中で、興味深い会話が耳に入ってくる、ということと近いかもしれません。

ツイートから「どんどん会話が生まれる」というのは、Twitterだからこそ実現できるとても大事な特長です。会話が生まれるように、自由で、開かれたインターネット文化を大事にするという姿勢は、社内でも浸透していますし、私自身がその姿勢を誇りに感じています。2018年3月にCEOのジャック・ドーシーが「会話の健全性」にコミットする宣言をしました。(下図参照)

 

ジャック・ドーシー氏「会話の健全性」にコミットする宣言

 

Twitterは「ソーシャル・ネットワーク」と他のサービスとともに一括にされることが多いですが、知り合いとの繋がりよりも、情報との繋がりが大事なので、興味関心を起点とした「インタレスト・ネットワーク」あるいは「インフォメーション・ネットワーク」の方が的を得ていると思います。Twitterを開く時、人は自分のこと(もしくは他者のこと)についての投稿(Look at Me)を見るためというよりも、世の中で起きていることについて投稿(Look at This)を見るつもりでいるんですね。


「Twitterマーケティング」とは



もしかしたらTwitterは「お腹空いたなう」と10代20代の人たちがぶつぶつ独り言を「呟いて」いるだけのソーシャルメディア、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。あるいは「軟式」と言われる「ゆるいコミュニケーションを好む中の人」が、瞬発力ある面白いツイートでフォロワーとやりとりをするのが「Twitterマーケティング」だと捉えられているかもしれませんよね。

正直なところ、私自身も入社以前は「あとはソーシャルで拡散されます」という、なかば強引かついい加減なプランニングをしていたことは、恥ずかしいかぎりです。今回お伝えしたいのは、「拡散される」ことを運任せにすることが実は大変勿体ない、ということなんです。Twitterは、知れば知るほど奥深く、色々と実験した分だけ自らの糧につながるプラットフォームになります。


興味関心のある人に届けられる



Twitter広告商品を使わずに、ブランドのアカウントからツイートすることでフォロワーの人に見てもらうことは可能です。ただ、そのツイートをより多くの人に見てもらい、さらには拡散されたり、会話に参加してもらうためには、戦略的に考える必要があります。Twitter広告商品のターゲティングは少し特徴的です。

どのようなアカウントをフォローしているのか、どのようなツイートに反応しているのか、どういうツイートをしているのか、などといった情報を基に、その人の関心あることを抽出し、人々の興味関心で溢れるタイムラインの中に、うまく馴染んだ形で配信できるのです。

最近では、アカウントをフォローするのだけでなく、興味関心に基づいた「トピック」をフォローできるようになりました。これは利用者にとって関心のある情報がタイムラインに増えることでより一層関心のあるトピックを使ってもらえると同時に、この新たなシグナルによって広告主向けのターゲティング精度も上がることが期待されています。

ある話題に関する会話が多ければ多いほど、次のトピックに採用すべきと評価される傾向にあります。トピックは皆さんが会話しているイベントだったり、人物、出来事に関する幅広く持続的な会話を反映しています。


Twitterデータの活用法



Twitterは世論の全てではないですし、インターネットの全てでもありません。当然、Twitterデータだけで、全てのリサーチが事足りるわけではありません。しかし、これほどまでに大勢の人々の「本音」がオープンに集まる場所は、マーケティング観点でとても価値があると思います。

1人が「ビール」とツイートしていることにマーケティングのヒントを見つけるのは難しいですが、例えば「ビール」という単語の会話量の推移を見て、意外にも木曜日の午後が特徴的に伸びることが分かったとします。そうすると、木曜の夜に「帰宅途中のコンビニでビールを買いませんか?」と広告を出すことができます。季節別の変動を見ることで商品開発にも活かすのも可能です。

定性的な発見をするのにも役立ちます。「ビール つまみ」という2つの単語を検索してみると、人がどういう組み合わせでビールを飲んでいるのか分かります。さらにインサイトフルなツイートを見つけるためにお勧めなのは、レシピや検索サイトで使うような凡庸な単語ではなく、人の感情が溢れ出る、もしくは垣間見れる「ツイート」を意識した単語で検索することです。「ビール つまみ なにこれ」や「ビール つまみ 意外」など、単語を加えるだけで見えてくるツイートも変わってきます。

ご自身が関わってるブランドも、どうぞTwitter上で検索してみてください。ネガティブな事を言われてそうだな、と少し怖い場合はブランド名の後に「良かった」や「おすすめ」などポジティブな単語も入れてください。何か新しい発見があるかもしれません。

世論の全てではないと書きましたが、Twitterで話題になったことがネットニュースに広がり、テレビや新聞で取り上げられることが頻繁に起きるようになりました。宣伝もしていない過去の製品が話題になって売り切れる、という話を耳にすることも増えました。全てを予想することは不可能ですが、運任せでない、マーケターの皆さんが持つ戦略的かつ創造的なアプローチを十分発揮できるのがTwitterというプラットフォームなのです。


「新しい生活様式」の兆しを捉える



前職の新人時代に「タウンウォッチング」の研修がありました。仮説を持たずに街に出て、人々を観察する重要性を学びました。在宅勤務や新しい通勤形態の中で出来るタウンウォッチングの代替としてタイムラインを覗いてみると、何か新しい発見があるはずです。

2020年は大波乱の様相を呈しています。新しい生活様式が、ビジネスにどのような影響をもたらすのか、皆さんも模索されていることでしょう。人々はTwitter上で引き続き、これまでの生活の延長線上にある新たな気づきや考えをツイートしています。例えば「見直す」という単語が、今春ごろから増加傾向にあります。この未曾有の変化に対応するために、身の回りを色々と見直していることが伺えます。

「新たな規範」などと言われると、全く新しい何かを見つけないといけないと構えてしまいますが、もしかしたら、もっと先に来ると思っていたこと(デジタルトランスフォメーションなど)が早まっただけかもしれません。戦略立案をする際のリサーチに、是非ともTwitterデータを加えてご活用いただき、Twitterでの広告およびオーガニックの運用でご利用ください。


橋本 昇平 (はしもと しょうへい)
Twitter Next Japan マネージャー
あらゆる企業のマーケティングに最適なTwitter上のオーディエンスや会話を見つけ出し、企業のマーケティングに活かすコミュニケーション戦略を推進するチームを統括。2014年7月、Twitter Japanにブランドストラテジストとして入社。入社以前は、広告代理店にて国内外の広告主のマーケティング戦略立案業務に従事。

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