【米国でのクルマなし生活】便利なサービスが続々と登場

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2018年8月号『交通革命、その先:変わる生活、生まれるビジネス』に記載された内容です。)

本稿は、米国サンフランシスコ在住の三浦茜さんへの電話インタビューから構成したものです。

ライフスタイルを変えた新たなサービスとは

本荘:移動に関わるサービスの登場で生活はどう変わりましたか。

三浦:ライドシェアですが、バスより安いから気軽に使っています。公共交通機関より安く乗れて、バス停でなく家の前に迎えに来てくれますし。買い物もアマゾンでホールフーズの商品を注文するとすぐ自宅に届きます。これまでクルマが必要だった状況で、その代わりになるサービスが色々とあります。私は運転免許を持っていなくて、驚かれます。いままではクルマがないと米国では生きていけないと言われていましたが、こうしたサービスがあるから困りません。

本荘:クルマについての見方は変わりましたか?

三浦:クルマのブランドを意識しなくなりました。Uberでどのメーカーのクルマが配車されようが乗りますよね。つまりユーザーから見るとクルマが電車化しているんです。電車の車両のブランドは気にしませんよね。移動がサービス化して、プロダクトとしてのクルマのブランドの認識が薄れています。

本荘:ライドシェアにも色々ありますが、どう選んでいますか。

三浦:Uberはセクハラ問題やドライバーからの文句もあってイメージが悪くなり、ライバルのLyftしか使わないという人もいます。でも、来るドライバーは同じ(UberとLyftを兼業している人が多い)だからサービスの質は変わらないので、安い方を頼んでいます。Uberは割引クーポンで安いときもありますが、使うときに比べるとLyftの方が安いから私はLyftが多いです。
世の中的にはUberだと、uberXよりもuberPOOLが多く使われているようです。uberXを頼んでも、近くのクルマがみなuberPOOLで誰かを乗せているからなかなか配車されないこともあります。Uberが狙ってるのは、効率化して料金も抑えられる乗り合いの方です。いまは理想の姿に進む過渡期ではないでしょうか。

注:Uberの主要サービス
uberX 1-4名向けのプライベートな乗車サービス
uberPOOL  同じ方向に向かう乗客同士をマッチングし、同じ車で移動して料金を抑えることができる。ドアツードアで、2 名まで利用可能。
これ以外にも、Uberが提供する配車サービスには、高級車やSUV、ビジネス向けなどいくつかの種類がある。


特徴ある多様なサービスが続々と

本荘:一般的なライドシェアが普及していますが、特徴のあるものは出ていませんか。

三浦:子供の送り迎え特化のサービスもあります。ドライバーには子供を扱う経験ある人を使い、事前に細かな審査が行なわれているようです。すでに何社もスタートアップが立ち上がっていて、安心なサービスを競っています。
それから、シェア自転車があります。今年、Lyftがシェア自転車トップのMotivateを、Uberが乗り捨て型の電動自転車シェアのJUMPを買収しました。すでにUberアプリに入っていて、自転車が使えるようになっています。自転車メニューができてから10%くらい既存のUberサービスの利用が減ったとか。
移動にはグラデーションというか、早くや安くなどユーザーのニーズはそれぞれですよね。いくつかの選択肢から、ユーザーが選べるようになるのはいいですね。こっちのバスや電車は時間が読めないし、バス利用はさらに減るかもしれませんね。

本荘:デリバリーや買い物代行はいかがでしょうか。

三浦:手が離せないのでオフィスのランチもUber Eatsなど使っています。でも、なんと言っても、(アマゾンが米食品スーパーのホールフーズ・マーケットを2017年8月に買収してから)AmazonプライムNowにホールフーズが加わったのが大きいです。注文してから実質3時間ほどで届けてくれて手数料は無料(10%程度のチップ有)。これならLyftを使って買いに行くことはない。ホールフーズはもともと信頼のあるお店で、いままで買っているから何があるか知ってるし、安心して使っています。
アマゾンのホールフーズ買収は、面白いことに買い物代行のインスタカート社にとっては追い風で、今年大きな資金調達(350百万ドル)もしました。買収発表後にアルバートソンズなど他のスーパーがあせって、インスタカートの提携先は増えています。

本荘:デリバリーや買い物代行で、特徴のあるものは出ていませんか。

三浦:ウォルマートが各家庭の冷蔵庫へのデリバリーを発表して、賛否両論がありましたが、ちょっとしたことのようでその差は意外と大きいですし、利用する人は多いと思います。例えば、ニューヨークのスタートアップHello Alfredがすごくて、買い物代行で頼まれたシャンプーを、お風呂場のいままでシャンプーがあったとこに置くという、ホテルみたいなサービスを提供しています。
ユーザーはどんどん怠け者になるでしょうし、事業者には色々とチャンスがあると思います。



三浦 茜  (みうら  あかね)氏について
サンフランシスコでScrum VenturesのVP of Marketingとしてお勤めの傍ら、アメリカのスタートアップの情報や新サービスを実際に試した感想などをFacebookページ「プロダクトハンターあかねのネタ帳」やブログで発信している。

Scrum Ventures(スクラムベンチャーズ)
日米での起業経験がある複数のパートナーが運営するベンチャーキャピタル。シリコンバレーと日本におけるネットワークを活かし、アーリーステージのスタートアップ投資と大企業のオープンイノベーション支援を行っている。

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