世界最先端のユニファイドコマース実現へ :ベイクルーズが実践する成長のためのAIテクノロジー活用

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年3月号『変わる売り方 ~アパレルの未来~』に記載された内容です。)

2020年8月期決算において、EC売上高が500億円を突破し、EC売上高全体における自社EC比率も77%(前年比37%増)と苦境にあえぐアパレル業界において自社EC中心の戦略が功を奏し大きな成長を成し遂げているベイクルーズ。

ビジュアルAIテクノロジー「Syte」の提供をはじめ、多くのAIテクノロジーの導入支援を行っているギャプライズの視点から、ベイクルーズ社のEC成長要因やAIテクノロジー活用を分析します。

 


スピード感と柔軟性を持った組織体制


 

多くのアパレルEC企業様と取引を行う弊社から見て、EC成長の要因の一つとして挙げられるのはベイクルーズ社の組織体制です。現在、ベイクルーズ社のEC部門には180名(2021/02/01時点)が在籍し、デザイナー、プランナー、マーケター、エンジニア、アナリスト、UI/UXなどが在籍し、ECを運用するうえで必要な業務をほぼすべてが内製で対応できる組織となっております。

そのため例えば、一度のMTGで社内からプロジェクト責任者、デザイナー、フロントエンジニアの方に参加して頂き、MTG内ですべての意思決定を行いアクションに落とし込むことが可能となっております。この内製化のシステムがベイクルーズ社のEC成長の大きな要因となっていることは間違いありません。

弊社が提供しているビジュアルAIテクノロジー「Syte」についてもコロナ真っ只中に導入の意思決定を頂き、2020年7月にローンチしております。全社としてみれば、店舗の休業や消費の落ち込みがある中でこの意思決定ができるのはEC部門に大きな裁量と内製で対応できる組織力があるためと感じております。また、導入の検討開始からリリースまでを6か月ほどしかかかっておらず、このスピード感も変化が大きい社会情勢の中で成長していく秘訣になっているかと思います。

 


NPSを活用したユーザーニーズの把握



前述の通りベイクルーズ社は2020年7月に弊社が提供するビジュアルAIテクノロジー「Syte」を導入しました。※1「Syte」はブランドや小売店向けのビジュアル AI プラットフォームのリーディングカンパニーとしてカメラ検索、レコメンデーションエンジンなどの革新的なソリューションを提供しています。※2

ベイクルーズ社はなぜ予算削減が求められていたタイミングで「Syte」に投資をしたのでしょうか。ベイクルーズ社は年に2回、自社ユーザーに対してNPSアンケートを行っております。その中で長年の課題が「絞り込み検索」へのニーズでした。これは本質を考えると、ユーザーは従来の製品発見の手法では求めている結果にたどり着けないため絞り込みへのニーズが高いと言えます。

つまり、本来であれば絞り込みをせずとも検索段階でほしい情報を得られることがベストであるにもかかわらず、それが難しいため絞り込みへのニーズが高いと言えます。また、昨今の消費者行動の変容として製品発見をする手段がGoogleからInstagramに変わってきていました。

 


ビジュアルAIの活用



こういった背景からユーザーの利便性を向上させ、求めている情報を最初の検索結果として反映するためにビジュアルAIテクノロジーの「Syte」を導入し、画像検索を始めることにしました。世の中に複数ある画像検索サービスの中で、なぜ「Syte」を選んで頂いたかというと、圧倒的な精度の高さが理由です。

数年前にも画像検索の導入を検討していたそうなのですが、その際は満足できる精度を提供できるサービスがなく辞めてしまったそうです。実現したい未来に向けて妥協せず、いいものを探し続けることも真に顧客満足度を高め事業成長を続けられる要因かもしれません。

現在、「Syte」の利用開始から半年ほどが経過しておりますが、「Syte」画像機能を利用したユーザーのCVR(Conversion Rate:コンバージョン率)が通常ユーザーのCVRと比べて3倍以上に高いなど導入後の結果は想像を超えるものとなっております。

 


今後のAIテクノロジー活用
ユニファイドコマースの実現に向けて



ベイクルーズ社は、今後の展開としてユニファイドコマースを推進しています。ユニファイドコマースとは、オムニチャネルで実現した統合プラットフォームをベースにリアルタイムに顧客を理解し、その情報を活用して顧客一人ひとりに価値あるショッピング体験を実現することを意味します。

つまり、これまでの店舗、ECサイトといった複数のチャネルを統合し、いつでもどこでも買い物ができる、というだけではなく、完全に店舗とECサイトの垣根をなくしてデータやサービスをリアルタイムに共有することで、より個々のお客様のニーズに沿ったサービスをどのチャネルでも提供することを目指しています。これを実現するため、多くのAIテクノロジーの導入やより広範な利用を進めております。

例えば、現在はWEB領域のみで活用している「Syte」の実店舗での活用(例:ユーザーが着用している服をリアルタイムに正確に認識して、おすすめのアイテムをレコメンドするなど)も視野に入れています。

また、弊社としてもこのユニファイドコマース実現に貢献できるその他のAIテクノロジーのディスカッションも新たに実施しております。具体的には、現状、アパレル小売りにおいて店舗とECの大きな壁として「高い知見を持った販売員の接客」と「試着」が挙げられています。

例えば店舗であれば、お客様の体型や持っている服を聞いたうえで最適な提案をすること、また、顧客も提案を試す(試着)して購入の判断ができます。一方、ECサイトであれば、自分の家のクローゼットを見ながら自分で着合わせを考えたり、スタイルの良いモデルさんが着ている画像から自分が着ている姿を想像しなければなりません。こういった壁を乗り越え、ユーザーが店舗とECサイトの垣根を超えた体験を享受できるよう取り組みを今後強化したいと考えています。

図表 《クリックして拡大》

 

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〈参照元〉
※1 ベイクルーズ社プレス記事:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000682.000011498.html
※2 Syteサービスサイト:https://syte.gaprise.jp/

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高瀬 裕理(たかせ ゆうすけ)
株式会社ギャプライズ 部長。外資系メーカーに日系IT企業を経て2015年にギャプライズへ入社。各種海外最先端テクノロジーの営業やカスタマーサクセスを経て、新規サービスの日本導入支援に従事。現在は広告運用事業の責任者兼アパレルテクノロジーのスペシャリストとしてマネジメントやベイクルーズなどアパレル企業の成長支援を行っている。

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