新型でいこう:幸せな子育てと仕事withコロナ

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年1月号『新型でいこう』に記載された内容です。)


コロナ禍での出産


 

2020年6月、コロナ禍真っ只中に第三子を出産した。妊娠がわかった頃は「この子が生まれてくる頃には、東京オリンピック直前で、国内はさぞにぎやかになっているだろう」なんて想像していたのに、まさかこんなことになろうとは。出産を目前に控えた4月、上の娘たちの保育園から登園自粛願いが出された。自宅で子供たちの面倒を見ながら仕事をすることになった。当然子供たちはそんなことお構いなしで、遊んで欲しいと絡みついてくる。降ってくる仕事、喚く子供たち。

幸いにも夫も在宅勤務となり、1対2という最悪のケースは避けられたが、それでも率直に言って仕事にならない!遊んで欲しいのに構ってもらえない子供たちはストレスが溜まって叫び、それに対して親が怒り、子供も大人も更にストレスを溜める悪循環。3人目が生まれたらいよいよ仕事なんて出来ないかも、という不安もあり、正直参ってしまっていた。

更に、いざ出産が近づいてくると、産院からお達しがあり、「立会は一人だけ。東京からの来訪者は受け入れない。」と言う(私は東京在住だが、群馬で里帰り出産をした)。東京からの来訪がダメということは、夫が立ち会えないということだ。3回目とはいえ、家族に立会ってもらえないなんて寂しいし、「これからのコロナ禍での3人の子育て、どうなっちゃうの・・・?」と、不安でいっぱいだった。

 


Withコロナの子育て


 

しかし、お腹の子は待ってくれるはずもなく、予定通り6月に元気に生まれてきた。そうして私の「3人の子育てwithコロナ」がスタートした。いざwithコロナの子育てが始まってみると、子供たちの遊び場が軒並み閉鎖されたり、保育園でのコロナ感染の恐怖など、不便・不安はあったものの、意外にwithコロナの生活も悪くないな、と思わされた。

例えば、ネットスーパーにはとても助けられた。赤ちゃんを連れて行かずして、安心してゆっくりと買い物ができる。コロナウイルスの流行を機にデリバリーが一気に標準化したが、そのことに助けられた私のような人間は多いのではないだろうか。

 


コロナ禍での育児と仕事



そんな「コロナ中の幸い」は仕事にも訪れた。ほぼ全ての打ち合わせがリモート化して、移動時間がなくなったことで、子育てとの両立がとてもしやすくなったのだ。以前は1時間の打ち合わせに往復2時間ほどかかることもあったり、出かける時は保育園に急いで預け、終わる時には打ち合わせ先に「お迎えの時間があるので、お先に失礼します…!」と言う、こんな煩わしい思いをする必要がなくなったのだ。

オンラインであれば、打ち合わせ中に赤ちゃんにミルクをあげたり、何ならおむつ替えをすることだって出来る(匂いも届かない!)。その他に、カメラ越しに赤ちゃんの姿がチラリと見えると場が和むという効果もある。そんな、オンライン化による恩恵は、仕事以外の場でももたらされた。

 


赤ちゃん連れにも開かれた学びの機会



今までは、行きたい講演会やセミナーがあっても諦めることがほとんどだった。赤ちゃんの泣き声で白い目で見られ(ている気がし)たり、廊下であやしているうちにほとんど聞けずに終わってしまったり。泣くことが仕事の赤ちゃんに「なんで今泣くの?」と苛立ってしまったこともしばしば。親の勝手で連れてこられている赤ちゃんの身になってみればなんともかわいそうな話である。

しかしオンラインであれば、ミュートにすれば泣き声は聞こえないし、講演の録画データを共有してもらえば子供が寝静まった後でゆっくりと見ることもできる。実際、以前は半年に1回講演会に参加できれば上出来だったが、最近は月1回は参加することが出来ている。

さらに、私自身が、主催者・登壇者として、海外でのワークショップや講演会にリモートで参加することも出来るようになった。オンラインでなければ、子供連れの海外出張となるわけで、実現可能性はほぼ0だっただろう。

 


コロナ禍での新しい仕事と育児の両立



このように、オンラインのほうが気軽にミーティングができるし、場所の制限に囚われず色々な人とコミュニケーションを取ることができ、総じて働きやすくなったと感じている。厳密に言えば、インターネットを活用して海外とやり取りをする、というのは以前からも可能だったのだろうが、コロナ禍でのWEB会議の急速な普及によって気づかされた、思わぬ収穫であった。

一方で、最近になって「働きやすさ」の弊害を感じ始めてもいる。いつでも、どこでも、仕事・会議が出来る、ということは、自分で区切りを付けないと「いつまでも」仕事をしてしまう、ということである。17時にパソコンを閉じて、はい終わり!と子供を迎えに行っても、スマートフォンからメールが返せてしまう。常に自宅から仕事をしていることで、仕事とプライベートの境界を維持することが難しくなってしまった。

ついには先日、4才の娘に「もうスマホ見るのやめて!目が悪くなるよ!」と注意されてしまった。注意の仕方が自分にそっくりで笑ってしまうと共に、子供に寂しい思いをさせていたことを深く反省した。

2020年は、コロナ禍で新たな働き方の可能性を見つけたと共に、家族との向き合い方に反省点を残す一年となった。2021年、私の新型は、「メリハリをつけた働き方でいきます!」これ以上目が悪くならないように・・・。

 

蛭子 彩華(えびす あやか)
一般社団法人TEKITO DESIGN Lab 代表理事/クリエイティブデザイナー
1988年群馬県前橋市生まれ。2012年立教大学社会学部を卒業し、IT企業に勤務。結婚を機に退職し、夫の南米チリ駐在へ帯同。帰国後の2016年、第一子出産と同時にTEKITO DESIGN Labを設立。現在は3児の母として、様々な社会課題に、デザインとビジネスの循環の仕組みでアプローチしている。育児をする中で絵本の持つ力に気づき、デザイン活動から得た経験を基に絵本制作にも励む。

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