丑年の新しい健康感とは (健康からウェルネスヘ)

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年1月号『新型でいこう』に記載された内容です。)


新型という言葉のイメージ変化


 

2020年はコロナ禍に始まりコロナ禍で終わる一年であった。今回のコロナは新型コロナと呼ばれ、「新型」という言葉自体が何やら得体のしれない不気味な感覚を覚えるものである。しかしながら本来は「新型」は「得体の知れない不気味な概念」ではなく、「新たな機能や楽しみを持ったワクワク概念」であったはずである。

若い頃、自動車のモデルチェンジの時に「新型〇〇」というだけで、何かワクワクし購買意欲が喚起された覚えがある。果たして最近、そのようなワクワク感を感じる時があるかと自問をしてみた。答えは「否」ないしは「判らない」といった所である。なぜそうなのか?を考える事によって「新型」のワクワク感を今一度取り戻す事ができるかもしれない。今、「ニューノーマル」という言葉がしばしば語られているが、この言葉に対し、違和感や不快感を感じる方々がいらっしゃると言う。

何故にそうなるのであろうか。「ノーマル」という言葉の定義は人それぞれに様々なものであるであろう。ある人は「普通」ある人は「平時」ある人は「標準」、ある人は「コモンセンス」と様々であろう。

そうした中で「ニューノーマル」という言葉に違和感や不快感を覚える場合は、きっと何やら「上から目線で自己が否定され、自己改造」を行うように強制されていると感じるからではないか。「安定」が否定され、様々な要件により、自らの行動や思考パターンが一定の制限を受けるように感じるからかもしれない。自由度の縮小や、統制社会や全体社会の概念が強くなるからではなかろうか。

「新型」でワクワクするためには、まずは「自らの行動や考え方を否定されない事」、そして、まずは「日々の行動により快適さを増す事」などが求められるであろう。即ち、自らが主役となり夢を叶える事が新型の必須要件であるように思う。果たして、今の世の中が夢を見、語る事を容認する世の中なのか。

巷では「見える化」「はたまた共有化」と言った言葉が花盛りであるが、本当にその事が夢を見る幸せや新型という言葉が本来持ちうる「あこがれ」や「ワクワク」に結びついているのであろうか。あえて見えない部分や、自分だけが知っているという声には出せないスリリングなワクワク感があっても良いはずである。

コロナ禍は、一日も早い終息が求められるが、一方では環境変化に対応して私達が変えて来た価値観の変化の危うさを突き付けてきたのではなかろうか。

 


変わる購買行動化


 

一般的なコモディティの分野での最近の購買行動で顕著な事は、店内回遊時間の減少である。元来、店内回遊距離と時間の長さは購買量・購買金額と比例する傾向であった。しかしながら、コロナ禍においては、明らかに店内回遊距離と時間が短縮されることとなっている。

ありていに言えば、目的購買が顕著となり、衝動購買率が減少した事である。欧米型の買い物メモを持参した買い物へと購買行動が変化したようである。ワンストッピング性とブランド価値が確立された商品への志向度が増すこととなっている。買い物の楽しさとは逆方向に向かっていると同時に新商品や新ブランドが受容されにくい環境と言える。

そうした面でも「新」というコンセプトには逆風が吹いていると言える。外出の自粛、シニア層の増大等からECの成長は自明の事であるが、元来はECのサイバースペースでは無限の品揃えが魅力であるが、あくまでも店頭からECへと購買地点が変化した事を考えれば、ECでの傾向も前述のように、確立されたブランド価値商品へのシフトが顕著であると言える。

そうした中では、「新」という事を打ち出すためにはお客様がまだ気づいていらっしゃらない既存商品や既存ブランドの「新たな価値」を打ち出す事が大切である。新商品を乱発するマーケティングから既存商品の深堀により、新たな価値を打ち出す事が必要ではないであろうか。

 


丑年の健康意識



2021年は丑年であるが、丑年とは我慢(忍耐)、新たな変化のための準備期間といった特徴のある年だそうである。まさに2020年から始まった変化を継続する年である。直近のインフルエンザ患者数推移を厚生労働省のホームページから見ると、2018年の1%程度、2019年と比較した場合は0.1%程度となっている。

インフルエンザワクチンの接種率の上昇と同時にコロナ禍によって一層脚光を浴びるようになったマスク、手洗い、うがいといった衛生意識の向上、3密の回避等が効を奏していると考えられる。インテージ社のデータによると、2020年の売れ筋商品はマスク等の衛生関連商品と巣ごもり需要に対応した内食関連の食品等が中心のようである。

同時に食品に関しては、免疫力向上に効果があると言われている発酵関連商品と巣ごもりに伴うコロナ肥り解消のためのプロテイン関連商品が好調である。免疫力向上はまさに自分自身が主役の自分の体の中の事である。またコロナ肥り解消も自分自身の肉体のバランス調整の意味合いである。まさに自分自身が主役である。

フィジカルな面ではそのような事があるが、メンタルの面に目を向ければ悲しいニュースがあまりに多い事に耳を塞ぎたくなる感である。過去メンタルの面がここまで話題になった事があるであろうか。私の経験では未だ無いことである。

従来、健康意識の中ではフィジカルな面で語られる場合が多かったが、メンタルの面や公衆衛生的な概念も同じ重要さで解釈し、ウェルネスの考え方を広く持つ事が必要ではなかろうか。ウェルネスを辞書で検索すれば「より良く生きようとする生活態度」とある。健康はウェルネスのための一手段というものである。

12月16日、独創的な機能やデザイン、ファブレス経営(工場等を持たずに固定費を圧縮する持たざる経営)で有名な家電メーカーのバルミューダ社が東証マザーズに上場した。この事は何かヒントにならないであろうか。

コロナ禍という制約与件の中で制約与件を生かし、一人一人が主役となり、ちょっとした工夫で日々の暮らしと健康をコーディネートし、少しでもより良く快適に日々を過ごせるようにする事、そして、まずは最も近しい存在である家族がウェルネスを実感できるようにする事、この事がまさに「新」健康意識、そしてウェルネスではないであろうか。

 

中島 聡(なかしま さとし)
株式会社明治 執行役員 マーケティングソリューション部長
生活者・流通業・情報技術革新等を踏まえた統合マーケティング戦略策定業務に従事。他に、公益社団法人日本マーケティング協会常任理事、明治大学大学院グローバルビジネス研究科兼任講師、気仙沼水産食品事業協同組合顧問、食品需給センター理事、ヘルスケア学会理事を務める。

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