コロナで変化した顧客を捉える構造「アクセプターモデル」とは?

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年1月号『新型でいこう』に記載された内容であり、「Web担当者フォーラム」に筆者が寄稿した記事を加筆・編集したものです。)

コロナ禍に見舞われた1年を経て、顧客や消費者に様々な変化が起こったと言えます。今後のマーケティングを正しく実行するためには、変化した顧客を正しく捉える必要があります。今回は筆者が100以上の商材、5000人以上の顧客体験分析から構築した「アクセプターモデル」で、変化した顧客が「どうブランド・商品・サービスを受け入れたのか」を読み取る方法について解説します。

 


100以上の商材、5000人以上の顧客体験から生まれた「アクセプターモデル」


 

どうすれば顧客が自分たちの商品を受け入れてくれるのか?という問いは、マーケターにとって非常に重要な課題だと思います。筆者は様々な商品・サービスの顧客体験を分析してきたことで、「顧客が商品・サービスを受け入れる」という瞬間に、顧客の頭の中で起こっている事に、ある一定の構造があることを見つけました。

「アクセプターモデル」とは、顧客が商品・サービスを「受け入れる(=Accept)」構造をモデル化したもので、顧客理解だけではなく、自社商品・サービスで提供すべき顧客体験を設計できる手法です。アクセプターモデルを使ったマーケティングの進め方については、拙著「顧客体験マーケティング」で詳しく説明しますが、本記事では簡単にマンガで解説してみたいと思います。

【アクセプターモデルの4コマ漫画】


コロナ以降、レギュラーコーヒーを飲むようになった消費者の「アクセプターモデル」


 

アクセプターモデルとは、商品やサービスが顧客に受け入れられるプロセスを4つのステップで構造化して捉える為のモデルです。次の4コマがアクセプターモデルの4つの段階に対応していますので、順にみていきましょう。

 


◆1.現状体験



現状体験とは、特定の生活シーンにおいて普段意識されない顧客にとって“当たり前”の認識や行動です。「今まで知らなかったので、重視してこなかった」とか「当たり前すぎて、意識したことがなかった」等です。最近だと、新型コロナウイルスの影響で、今まで「当たり前」だと思っていたことに改めて気づいた、という経験をした方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

今回のケーススタディでは、「仕事中、好きな時に離席して、オフィスの近くのコンビニにコーヒーやスナックを買いに行くのが当たり前だった」という部分が、コロナという刺激によって現状体験の「当たり前」に気づかされた、という構造になっています。

 


◆2.課題感の発生



フェーズ2では、当たり前と思ってきたことが当たり前ではなくなることで、現状に対する課題感が発生します。コーヒーのケーススタディの場合、「家の場合は近くにコンビニがないし、外出すると接触リスクもある。家の中でどうリフレッシュしよう」という部分です。例えば、家にずっといる人が、外で遊んで楽しんでいる人を見たら、「自分も外に出てリフレッシュしたい!」と思わずにはいられないでしょう。

このように「現状」と「理想」差分を認識してしまうと、顧客は今まで当たり前に行ってきた行動や疑問を持つこともなかった生活側面に意識が向きます。今回の場合、「家にいなければいけない」「けど外に出てリフレッシュしたい」と葛藤した結果、「家でリフレッシュできることをしよう」という課題感にたどり着いたと解釈できます。

 


◆3.受容価値



フェーズ3では、顧客の中に生まれた課題感に対して、ブランドの便益がマッチすることで、商品やサービスが顧客に選ばれます。このフェーズで大事なのは、「商品やサービスが買われた」というだけではなく、商品・サービスのどんな特徴や側面が、顧客に価値として受け入れられたのかという視点で理解することです。

レギュラーコーヒーには様々な特徴があります。味や香りの良さ、自分で淹れる楽しさやカッコよさなど、多くの特徴が挙げられます。しかし、特長をたくさん並べれば商品が買われるわけではありません。顧客が抱いている課題感に、特定の特長がかみ合った(マッチした)時に、顧客は商品・サービスを受け入れてくれます。このように実際に顧客に受け入れられた価値のことを、受容価値と言います。

 


◆4.生活変化



フェーズ4では、商品やサービスを受け入れた顧客自身の生活がより良く変わってゆく「生活変化」を描きます。コーヒー自体が美味しい事(機能訴求)は勿論大切ですが、それだけでは「顧客に選ばれ続けるブランド」にはなれません。コーヒーが顧客の生活の中で採用され続ける中で、顧客の生活をより良いものへ変化させ続けてくれるからこそ、コーヒーが愛され、顧客にとってなくてはならないものとなっていきます。

レギュラーコーヒーの場合、在宅で仕事をする過程で日々消費されると同時に、顧客の仕事を捗らせたり、気分転換してアイデアを閃けたり、その結果仕事が評価されるといった、自分自身の生活に良い変化をもたらす体験に寄り添っていたと考えられます。このような変化を生活変化と呼びます。

 


アクセプターモデルを使い、逆引きで顧客体験をつくる



売上が落ち込んでしまった商品やサービスであっても、その中には「それでも選んでくれる人」がいます。そういった顧客が自社を選んでくれた構造をアクセプターモデルで把握することで、どのような顧客体験をマーケティングで狙って作れば売れるかを「逆引き」できるというわけです。まずはアクセプターモデルで顧客の変化を捉えるところから始めてみましょう。

 

村山 幹朗 (むらやま みきお)
株式会社コレクシア 代表取締役
2011年に株式会社コレクシアを創業。マーケティングリサーチを用い、顧客データに基づいたブランドの戦略策定・施策立案の支援を行う。現在までに5000件を超えるカスタマージャーニーを作成し、ブランドの成長を実現する顧客体験の設計を手掛けている。公益社団法人日本マーケティング協会認定マーケティング・マスター。

会社概要
株式会社コレクシアでは、100以上のブランドと5000件以上のカスタマージャーニー調査(ナラティブ分析)実績から、最新のマーケティング手法の開発とブランドのマーケティング支援を行っています。一般的なSTP調査から製品開発の為のナラティブ調査、実施施策の広告効果測定など、マーケティングサイエンスを応用した各種ソリューションを取り揃えています。

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