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販売員の新たな働き方を創造する

販売の現場で起きていること
慢性的な販売員不足

取材先のデベロッパーやメーカーで話題になるのは「販売員の人手不足」のことが非常に多い。つい20年ほど前には“カリスマ販売員ブーム”があり、 憧れの職業だったはずなのに…と一昔前を憂いている場合ではないのが現状だ。
 特にこの数年でファッション業界に限らず、飲食業界、家電業界など、小売サービス業全体で現場(売り場)の人手不足が騒がれるようになった。

この人手不足の要因に「給料の低さ」「土日に休めない」「休日の希望が通りにくい」などの理由を挙げる方もいるが、これらのサービス業特有の働き方に対する不満からくるものは些細なものだ。一番の大きな要因は「少子高齢化によって労働力人口が減少」していることである。


日本は90年代中頃からすでに人口構成の変化が経済にとってマイナスに作用する状態である「人口オーナス期」に突入してきているのにもかかわらず、何の手立ても売ってこなかった。


その結果、労働力不足に陥っているのである。これからも少子高齢化で若い労働力人口が減り続けるのはもちろんのこと、20~30代女性も出産や育児で働く時間がだいぶ減ることになる。となると、働く側は少しでも良い条件で仕事をしようとするのは当たり前なのだ。


同じ時給がもらえるなら立ち仕事の販売とりも、デスクワークを選択する人もいるだろう。反対にデスクワークが苦手で、だれかをおしゃれにすることの方が得意だと分かっていれば、給料や休日よりも得意を生かせるアパレル販売員という働き方を選択する人もいるだろう。


そこに登場してきたのが「Uber」や「Airbnb」「タスカジ」「キッズライン」「ココナラ」「助太刀」など、ワークシェアリングのサービスを提供する様々な企業だ。そして、ファッション業界にも初の販売職のワークシェアリングを提供するメッシュウェル(MESHWell)が2019年1月にサービスを開始した。


販売職のシェアリングエコノミー
メッシュウェル(MESHWell)の誕生

株式会社メッシュウェルの窪田光平氏は学生時代からセレクトショップで販売を経験し、大学卒業後には丸紅に入社しアパレル製品の貿易、生産業務に携わり、ベイクルーズではEC事業や新規事業立ち上げなどを経験してきた。それまでの経験から販売員の雇用条件の低さや働き方の問題を解決したいと考えるようになった。


その後、MBA取得を目指しアメリカ留学をしていた時に、フリーランス販売員という働き方を知った。そのフリーランス販売員は副業で店には週1回しか勤務していないのだが、その接客に惚れた窪田氏はその販売員に接客されたくて足を運ぶようになった。そんな体験を経て、隙間時間で働きたい販売員と繁忙時に販売力を高めたい店をつなぐマッチングサービスはできないかと考え、「メッシュウェル」が立ち上がった。


その仕組みは働きたい個人が登録し、プロフィールを作成、スキルや働ける時間、希望報酬額などを登録する。一方、店や企業側もストア登録をし、プロフィールを作成すると人手が不足している時間帯などに合わせて登録者へオファーすることができるようになる。また、登録者がストアにオファーすることも可能だ。勤務後はそれぞれ匿名で評価をフィードバック。報酬のやり取りにはメッシュウェルが仲介に入るという流れだ。


19年12月の時点で登録者は500人を超え、月間マッチング数も2019年12月には300件を超えた。この1年間で1200回以上のマッチング、約4300時間の勤務時間を提供することができた。


登録者の内訳としては、元販売員で今はフルタイムで働けない方が6割、ダブルワーカーで働いている方が2割、あとは販売未経験ではあるがモデルやスタイリストなどの仕事をしながら販売をしたい方が2割いる。そして、19年末にはメッシュウェルのサービスを利用し、月商50万円を稼ぐ販売員も誕生。国内でもフリーランス販売員として働けるということを証明した。


ちなみに月商50万円を達成した販売員はアパレル販売員でキャリアをスタートし、ECサイトでチャット形式でのコーディネートサービス業務や顧客の買い物に同伴するパーソナルスタイリストなどを経て、19年2月に登録。それまでで培った接客のノウハウを生かし、アパレルや服飾雑貨、ジュエリーなど幅広く販売が可能な人材であることから、セレクトショップを中心に多くのストアから依頼が集まっている。


サービスから見えてきた小売業全体の課題

商業施設によっては施設で勤務する人全てに入店前研修を必須にしていたり、単発店頭に入る場合の入館手続きが面倒だったりすることがあるが、そういったハードルも何とかクリアし、徐々にサービスが広がりつつある。


現時点で東京、神奈川、千葉、大阪の4都府県で利用が可能。主に都内では中~大型セレクトショップや百貨店、ファッションビル、SC、路面店に派遣されている。


アパレル販売員は全国的に不足しており、地方の現状を見聞きすると短時間で接客力のある人材も欲しいが、しっかり長時間勤務できる販売員の需要が高い場合もあり、メッシュウェルのサービスを全国的に普及させるという点では現状は難しいと思われる。


だがしかし、働く側からしたら地方でも自分の接客スキルを活かし、隙間時間で働き方したいと思う元販売員は多いではなかろうか。販売職は『誰にでもできる仕事』と思われているが、実際には“コミュニケーション力”“質問力”“観察力”など、高いスキルがないと物は売れないことを知らない人が多い。販売のプロが持つ接客スキルをアパレルに限らず、幅広く小売業業界で活用されても良いのではないかと感じている。


先日、サービスローンチ1周年を記念したイベント「メッシュウェル オールスターフェス2019~2020」が東京・恵比寿で開催された。イベントではこの1年間で活躍した販売員たちの労をねぎらい、クイズ大会や表彰式などが行われた。


イベント会場にはメッシュウェルを活用している店や企業からもねぎらいのコメントが届いており、それを読むと、ストア側が登録している販売員へ高い信頼と期待をしているのを感じることができた。

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苫米地  香織(とまべち  かおり)
服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。
工業高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、某インディーズブランドで販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、グラフィック制作、トレンド分析、マーケティグなどに携わる。企画会社時代にファッション業界誌で執筆するようになり、現在に至る。
日本で一番アパレル販売員を取材しているライター。

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