スポーツによる企業イメージ戦略

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2019年1月号『スポーツ2019 2020』に記載された内容です。)


スポーツとの関係

来年2020年はオリンピック・パラリンピックが東京で開催される。とても嬉しく楽しみなのだが、この際に自分とスポーツの関係を振り返ってみると、子供の頃から、身体を動かすのは大好きで、特に水泳や幅跳びなどの個人競技は得意であったが、効果的な指導を受ける機会もなかったことから、チームで行うスポーツには性格的?に不向きなのか、経験がないのか、どちらかといえば遠い存在であった。


スポーツ観戦も決して嫌いではないが、テレビを中心にゴルフやサッカー、陸上などは好んで見るが、それ以外はあまり興味がない。あらゆるスポーツにおいて、大好きな選手やチームがあり、それを熱心に応援している人々はうらやましい。


ブランドイメージを高める効果
企業がスポーツを通じて、ブランドイメージを高めている場面に出会うことが多い。単純にスポンサーとして、社内の活性化の鍵として、地域貢献の一環としてなど様々な観点から企業イメージを高めるための手段、方法としてスポーツを題材に成功している企業は国際的にも枚挙に暇がない。


一方で、企業のコミュニケーションの手法も多様化し、デジタル化が進展することでSNSなどの活用頻度も高まり、消費者自らが発信する場も増えることにより、企業そのものや企業活動についての評価や好き嫌いも広く伝わることとなり、良い印象やファン意識を持ってもらうことの必要性が高まっている。


日経企業イメージ調査より
日本経済新聞社が企画、日経広告研究所が設計した「日経企業イメージ調査」は証券市場に上場している企業及び非上場企業のうち大手企業を中心に672社についての企業イメージを測定している。


毎年8月から10月にかけて実施し、1988年に現在の調査フレームで行うようになってから今回で31回を数える。調査は首都圏40km圏内の実際に企業に勤務している男女ビジネスパーソン、18歳から69歳までの男女個人一般個人、合計15,600人に31項目にわたって個別企業のイメージを尋ねている。


調査している31項目の中に「文化・スポーツ・イベント活動に熱心」という項目がある。文化やイベントのイメージも含まれることにはなるが、スポーツという言葉から、企業のイメージを連想するには最も近い項目と思われる。


2018年調査の結果はまだ出来ていないので、ここでは2017年調査の結果を見ることにする。ビジネスパーソンでは1位ナイキジャパン、2位アディダスジャパン、3位ミズノと6位までスポーツ関連の企業が占めた。一般個人でも1位ナイキジャパン、2位ミズノ、3位アディダスジャパンとなり、4位日本コカ・コーラを除いて8位までこちらもスポーツ関連企業であった(下表参照)。


ただ、上位をよく見ると飲料系や食品系などを中心に広告・マーケティング活動において、スポーツをうまく取り込んだブランドイメージを創りだしている印象を持った企業が目立つように感じられる。


さらに31項目の相関係数を参考にするとビジネスパーソンでは「社会貢献への取り組みに積極的」、「株購入意向」、「好感度」、「扱っている製品・サービスの質がよい」などが順に相関が高い。


一般個人では「活気がある」、「社会貢献への取り組みに積極的」、「センスがよい」などの相関が高い。このような項目は企業がそのイメージを高める際にスポーツの持つイメージと連動するものになりうる。また、時系列で見れば、時々で相関の高い項目が変わるのかもしれない。


逆に最も低い相関項目はビジネスパーソン、一般個人ともに「女性が活躍している」で一致している。これはスポーツで女性が活躍しているといったイメージづくりがまだまだ不足しているということなのだろうか。


ここに着目し、女性とスポーツの関連性をこれまで以上に繋げることにより、良い意味での新たな企業イメージを創出できるのではないだろうか。この辺りは今後も注目してみたい。


企業イメージ戦略のこれから
近代オリンピックの基礎を築いた、ピエール・ド・クーベルタン男爵の名言である「オリンピックは、勝つことではなく参加することにこそ意義がある」とは、スポーツとは拓かれたものであり、積極的に参加することが重要であり、その開催国・開催地として盛り上げることが必須であると解釈できる。


オリンピック・パラリンピックの活力をきっかけに日本の企業があらゆるステークホルダーに対して、これからの社会にふさわしい企業イメージ戦略を推進することで、時代に即したしなやかな企業ブランドを構築し、一段のグローバル化の進展を祈念したい。

 

 

渡部 数俊(わたべ かずとし)日経広告研究所 事務局長  
1985年日本経済新聞社入社。広告局マーケティング調査部長、クロスメディア営業局局次長、株式会社日本経済社執行役員経営企画室長などを経て、2017年4月より現職。日経広告手帖編集担当として計108冊の編集に携わる(1999年3月号~2005年2月号)。

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