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ビッグデータの活用によるお客様価値追究

人々に“人生の輝き”を
マツダは、2013年にブランド理念を掲げ、「カーライフを通じて、人々に“人生の輝き”を提供する」ことを狙い、全社でお客様価値追究に取り組んでいます。

CX-5以降の商品に全面展開したSKYACIV技術は、モノ造り革新の考え方のもと、商品価値と生産性を高い次元で両立させて実現したものです。その実現においては、お客様視点へのマインドチェンジが欠くことのできない重要なポイントでした。お客様視点で取り組んできたモノ造り革新と、ビッグデータを活用した更なるお客様価値追究について、ご紹介します。


マツダのモノ造り革新  “一気通貫”
お客様から好評をいただいているSKYACTIVエンジンは、開発、生産技術、生産、検査といったエンジン製造に携わる全部門が、モノ造り革新のコンセプトを部門共通の目標に掲げて実現してきました。


その攻め口は、製品構造Bestかつ高い生産性を定義した「コモンアーキテクチャー構想」、そのBest構造をベースに商品バリエーションを開発の思い通りに実現する「フレキシブル生産構想」と、それらを5~10年の長いスパンの商品を見据えて決めていく「一括企画」です。全社がまさに“一気通貫”で、その攻め口にこだわり仕事をしてきました。


我々、生産技術が主体で取り組んだフレキシブル生産構想においては、柔軟性と生産性を高い次元で両立させる事でビジネス効率を高めてきました。例えば、シリンダブロック機械加工ラインでは、柔軟性はあるが生産性が低いと考えられてきた1軸CNCマシンの効率を徹底的に高めました。


その為に、従来は価値と考えていた設備稼働状態を再分析し、製品が形になっていく切削動作を価値、それ以外の製品固定や搬送動作はロスと定義しました。そして、極限の工程集約によりロスを最少化することで生産性を高めたのです。


現在、このコンセプトの生産システムをグローバル展開しており、一つのラインで、多種の製品を同一の品質で高効率に生産する体制ができつつあります。


生産技術からの機能提案
モノ造り革新により、「走る歓びと優れた環境性能」を両立したSKYACTIVエンジンを、お客様に提供できるようになりました。一気通貫でやってきたことに加え、生産技術では「図面通りにバラツキ無く造る」から「お客様の為により良い商品を造る」へと大きなマインドチェンジがありました。


なぜ、変わったのか。SKYACTIVエンジンのコンセプトは、エンジニアであれば、絶対に実現したいと思わせる“理想”でした。従来は、生産領域の目標を必達する為に、開発部門へは図面公差を緩和する等「造り易さ」ばかりを提案していました。つまり、「ライン造り」に一生懸命になっていたのです。


しかし、それでは、“理想”のエンジンが実現できません。我々は、高効率フレキシブルラインの能力と、それを実現してきた技術力を「エンジン造り」に活かしたいと考えたのです。SKYACTIVエンジンでは、生産技術から“より良い商品造りの為の機能提案”を行い、高圧縮比ε14や、軽量化等の実現に貢献してきたのです。


100-1=0そして、お客様の期待を超える価値創造を
SKYACTIVでの“生産技術からの機能提案”の考え方を基本にし、生産技術では2つの柱でお客様価値を追究し続けています。まず100-1=0です。つまり、お客様にとっては、その一台が全てであり、その一台が満足いかない物であれば0点という考えで、品質を保証するしくみを構築しています。


そして、更には、造り方を追究し、お客様の期待を超える価値を提供していきます。エンジン、車体、車両全ての領域で、「魂動デザイン」「人馬一体」「燃費」と言った、お客様価値を高める取り組みを行っています。


ビッグデータを活用しエンジン機能を継続的に改善
SKYACTIVエンジンのラインでは、エンジン及び、その構成部品にシリアル番号を付け、そして、その番号と品質及び製造条件を紐付きで記録するトレーサビリティシステムを構築し運用しています。そのシステムにより蓄積されるビッグデータを、お客様価値追究に活用し始めています。


具体的には、エンジン組立ラインには、エンジンの回転抵抗やコンプレッション、バルブタイミング等のエンジン機能を全数計測する装置を導入しており、機能を保証しながらデータを記録しています。


そして、それら機能データと機能を造り出す素材・機械加工・組立における工程データを紐付きで計測・記録しています。エンジン一基で約1万種類になりますが、そのビッグデータを活用して、機能と因子の関連を解析して得た知見をもとに、製品の造り方を改善する取り組みを行っているのです。


進め方は、まず、過去の技術的知見から品質機能展開により機能とその要因のつながりを整理し、計測すべきデータを構造化します。次に、計測したデータを品質工学等の様々な統計的手法を活用して解析します。解析する上では、過去の経験に囚われず先入観を捨て考察を行っています。


例えば、燃費について、機能と因子データの解析により、バルブの駆動トルクについては、バルブスプリングの影響が大きく、それを制御できる機械加工工程の品質特性を見出しました。そして機能に影響する品質特性を地道に改善していくのです。


我々は、フレキシブルな設備を導入し、それを使いこなす技術を獲得しており、自在にそして即時に工程改善出来るのです。この様な活動を、量産の中で継続しています。


2011年、デミオのSKYACTIV-1.3Lエンジンの生産開始からこの取り組みを行い、燃費と相関のある数十特性を把握できています。そして、従来のエンジンに比べて大幅に燃費のバラツキを改善できています。今後も、社員全員のマインドをお客様視点にシフトし、全てのお客様にピンのエンジンだけをお届けできるまで、この活動を継続していきます。



佐崎  幸司  (さざき  たかし)
マツダ株式会社  パワートレイン技術部 エンジン技術Gr マネージャー

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