着物をコアにした城下町杵築

きつき和服応援宣言
大分県の北東部に位置する杵築市は、武家屋敷や商家、石畳の坂道が往時の姿をとどめ、今もなお江戸時代の風情が色濃く残る城下町です。南北の高台にある勇壮な武家屋敷がその谷間にある商人の町を挟んだ「サンドイッチ型城下町」の形状は、日本で一つと言われ、時代劇のロケでも使われる絶景の町並みは、一見の価値があります。




また、杵築市は、九州豊後路の小京都として、全国京都会議に加盟しています。そこで、「和服が似合う歴史的町並みを着物姿の方でいっぱいにしたい。」そして、「日本の文化である和服のすばらしさを再認識していただき、江戸時代の風情を心身ともに優雅に楽しんでいただきたい。」という思いから、「京都につづく着物で歩きたいまち」を目指して、全国でもめずらしい「きつき和服応援宣言」を行いました。


きつき和服応援宣言
 一、和服が似合うまちをつくります
 一、多彩な和服イベントを開催します
 一、和服姿の方に様々なサービスを行います
 一、和服を着る習慣づくりを応援します
 一、和服の素晴らしさを世界に発信します


和服が似合うまちづくり
まずは、和服が似合う町づくりを行いました。町並み景観を守っていくために、2階建て以下の規制や建物の色調など、建築物の構造等の制限を定めました。また、店舗等の外観を歴史的な町並みに調和するように新築、改修を行っていただく場合に補助金制度を創設しました。


また、着物を着てお越しいただくことはもちろんですが、一人でも多くの皆様に着物を着る体験をしていただくために、「きものレンタルと無料着付け」を毎日行うことにしました。しかし、着物を揃える予算がありません。そこで、市民からタンスに眠っている着物を寄贈していただくことにしました。皆様にご協力をいただきましたが、それだけではどうしても数が不足しますので、全国の着物愛好者が集う「NPO法人きものを着る習慣をつくる協議会」のお力をお借りして、全国の皆様からたくさんの着物を寄贈していただきました。


着付けボランティアの方には、いつもお力添えをいただいています。お客様は、桃色や黄色、青や紺など様々な色柄の中から自分好みの着物を選び、帯と合わせることがとても楽しいようですので、ボランティアの方には、きものコンシェルジュとして、着付けだけではなく、着物選びや帯合わせもお願いしています。


事業を継続的に行うためには、そこで暮らす人々のご協力が不可欠で、それは「人づくり」、「地域づくり」につながります。住民が協力し合い、楽しみながら事業を行っていけば、その活動の中で、人と知り合い、仲良くなり、そこから連帯感が生まれ、それが地域づくりに広がっていきます。


多彩な和服イベントの開催
毎月第3土曜日には「きもの感謝祭in小京都きつき」を開催しています。着物モデルの体験をしていただき、プロカメラマンが撮影した写真をプレゼントしています。また、スイーツや記念品のプレゼントなどのサービスを行いますので、お蔭様で人気を博しています。


また、琴の音色が流れる武家屋敷や商家にお茶席を用意し、着物の展示会や「想い出きものショー」など、着物にこだわったイベントを随時行っています。大正時代の酒蔵を改修した「きつき楽衆観」では、毎回違った大衆演劇が上演され活気に満ち溢れていますが、着物姿の人気役者と一緒に記念写真を撮ることができます。


着物事業は、外国人の皆様に日本文化の素晴らしさを伝える取り組みでもありました。「きもの感謝祭」には、留学生が多く在籍している別府市の立命館アジア太平洋大学から10カ国約50人もの留学生にお越しいただいたこともありますが、着物の美しさにとても感動していました。現在も、世界各国から多くの外国人の皆様にお越しいただいております。


和服姿の方への様々なサービス
和服で散策される方には、ゆっくり散策して記念写真をたくさん撮っていただくために、7施設の公共観光文化施設の入館料を全館無料にしました。また、市内約30の協賛店で、食事代の割引やソフトドリンクのサービス、お土産プレゼントなど、たくさんの特典を用意しています。


きものが似合う歴史的町並み
市全体で着物姿を応援するこのような取り組みが認められ、杵築市は、平成21年11月に「NPO法人きものを着る習慣をつくる協議会」から、全国初の「きものが似合う歴史的町並み」に認定されました。小さい町だからこそ市全体で取り組めた事業ですが、数ある観光先進地を抑え、全国第一号として認定されましたことは、光栄の至りです。


着物事業の展開
公的予算は、住民の税金で支えられている大切なものです。観光事業では、常に費用対効果を考えながら、お客様にお金を使っていただく消費型観光を推進していく必要があり、その推進には、お客様の滞在時間を長くすることが大切です。きものを着ていただきますとお客様の滞在時間が長くなりますので、グルメや抹茶体験などと組み合わせていけば、自ずと町に消費が促されます。


また、「ここにしかないもの」、いわゆるオンリーワン素材は、特に人を惹きつける力があります。「日本唯一・全国初・先駆け・他には例がない」などたくさんの言葉が思い浮かびますが、このようなオンリーワン素材をマスコミに情報発信すれば、競って宣伝してくれますので、この着物事業も注目度が一気にアップしました。


これからも、様々な着物事業を展開しながら、和服を着る習慣づくりを応援するとともに、和服の素晴らしさを世界中に発信していきたいと考えています。


黒田  幸一郎  (くろだ  こういちろう)
杵築市観光協会 常務理事

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