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主婦・主夫の「個」に焦点をあてると見えるもの

「朝起きて一番にあなたは何をしますか?」
そんな質問を投げかけたらどんな答えを返しますか?起き掛けの行動に自分でも気がついていないニーズが隠れているかもしれません。家の中でも創造できるコト・モノ・空間・時間をもっと表現できたならば毎日がどんなに楽しくなるでしょう。

女性の社会進出が当たり前となっている昨今、家事労働時間は15年前からほぼ変わっていないというズレが何か家事に対して閉塞感を感じさせてしまっているように思えます。(※総務省2011年調査より)


社会全体を俯瞰してみるとジェンダーという切り口ではなく「働き方」と「仕組み」が個々の意識や生活に沿っていない状態のまま社会が女性の力を求めているといった構図が出来上がっているように見えます。そして残念ながら家事役割の固定化(一般化)も何か要因となっているかもしれません。


ゆっくりですが、家族形態の多様化に沿った家事労働時間短縮をサポートするサービスや空間創り等が定着してきていると思います。ただ、消費者であり、生活の基盤を日々培っている主婦・主夫とサービス提供者である企業との満足度は一致しているのでしょうか。


人には2要因がバランスよく揃うとモチベーション(やる気)が醸成されると言われています。(米臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ提唱)


1.衛生要因 生活、家事における環境要因
2.動機づけ要因 生活、家事における意欲要因


衛生要因とは「住まう」家や生活全般の中の小さなルールや管理するべきお金や時間、物理的な空間を指します。動機づけ要因とは「住まう」家の中での働きに対する達成、承認、時間への考え方、生活そのものや責任分担、権限委譲等が対象になります。働き方に対しては後者である動機づけ要因に満たされるものは対人関係でしかありません。家族形態や時代の変化のスピードが速いあまり置いてけぼりになっているようです。


2要因の後者である動機づけ要因を把握するためには個人の行動パターンを見ていく必要があります。動機づけの言葉の意味には「動機」そのものと「欲求」が含まれます。その違いを4つの要素の強弱バランスで整理をした行動心理学理論のDiSC(米心理学者ウィリアム・ムートン・マーストン博士ディスク提唱)で紐解いていきます。思考方法、感じ方、行動様式から生活習慣の行動差異の理解が「個のらしさ」を惹き出し、動機づけ要因に近づくはずです。


全ての要素を一人が持ち合わせていて家事労働の置かれている役割や責任範疇、生活のイメージするシーンによって発揮する行動傾向が個々によって違います。

D:Dominance(主導傾向)の行動傾向とニーズのキーワード
 結果・一番・チャレンジ・短時間・合理的
 利用されることを嫌い、わかりやすさ、スピードを優先します。家事であれば時短を卒なくこなし、スムーズ且つ無駄なく物事を解決したいというニーズがあります。


i:Influence(感化傾向)の行動傾向とニーズのキーワード
 全体を見る・人間志向・承認・楽観的・感情重視
 一日の家事作業を時間と作業で組み立てて動き、誰のためにどれだけ手間暇かけてという点に重きを置きます。


S :Steadiness(安定傾向)の行動傾向とニーズのキーワード
 チーム重視・具体性・誠実性・感謝・安定
 家事であれば家族間の役割分担に重きを置きます。プロセスを理解すると毎日のルーティンワークも苦にならずにこなします。質より量をこなすことに長けています。


C:Conscientiousness(慎重傾向)の行動傾向とニーズのキーワード
 正確さ・完璧・論理的・批判的・データー
 質と正確さを重視する完璧主義者です。なぜ?そうなるのかと家事の事柄に投げかけをします。自分へも完璧でありたいがたいため批判的な言動が目立ちます。

 

4つの特徴的な行動パターンをご紹介しました。
もしもこのパターンを発揮している4人に「朝起きて一番にあなたは何をしますか?」と質問をすると

D:水を一杯飲みます。それ以外は不要です。
i:素晴らしい一日の始まり、家族のために朝食を用意します。
S:10年来変えていません。呼吸法で体を整えます。
C:水を朝7時に200CC、3分かけて飲みます。


この行動と思考の違いはお分かりになりますか?ここに自分を表現する「らしさ」(行動傾向)と「時間」との関係性が見えてきます。多様な家族形態の中の主婦・主夫の「個」に焦点をあてると日々の生活時間の使い方の欲求が見えてきます。


時短や問題解決という視点で家事サービスの拡大や家電品機能の向上、住宅の中での空間作りや動線計画等で随分と「住まう」事に対する意識向上はされてきているかと思います。


そして家事を観察することに焦点をあてる企業も増えてきました。よりその奥に隠れている「らしさ」の接点のポイント「コト・モノ・人・空間・時間」から毎日の生活をどう過ごしたいのか、日々の時間をどう紡ぐのかという、目指すquality of lifeを生活者とともに築きあげていくことが次に必要なのかもしれません。

 

 

輿石  範子  (こしいし  のりこ)
Life Creator Laboratory 代表 人財開発コンサルタント
旭化成ホームズ(株)にて営業、新人教育に従事。日本hp(株)にて人材開発プログラム立案や組織横断プロジェクト推進。(株)HRインスティテュートにてコンサルタントとして従事。2005年独立し、企業戦略に基づく採用、ポジショニング、教育等に携わる。本文中のDiSCの認知心理学のアセスメントを利用し社内コミュニケーション、顧客満足、プロジェクト支援の一環で会議のファシリテーションで企業や地域プロジェクトに参画。

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