各受賞プロジェクトのご紹介

2018年度の優れたマーケティング活動を表彰する「日本マーケティング大賞」選考委員会(選考委員長・高田 覚 朝日新聞社 取締役)は、「第11回日本マーケティング大賞 グランプリ」に、「ポカリスエットのマーケティング」を選出しました。
また、今回から新設した「準グランプリ」に、「『漫画 君たちはどう生きるか』のマーケティング」を選出、奨励賞5件、地域賞3件を選びました。

 

日本マーケティング大賞
選考基準
総合的に周到なマーケティング計画のもと、市場へのインパクト、独自性、ブランド定着性など、目覚ましい成果を上げたプロジェクトを選考委員会で選定。

中高校生に寄り添うブランドを目指す「ポカリスエット」のマーケティング
大塚製薬株式会社

 

受賞理由

ターゲットユーザー(中高生)が毎年入れ替わる難しい商品でありながら、総合的なマーケティングでターゲット層から共感・共鳴を得ることに成功。「中高生に寄り添うブランド」としてイメージを形成し、市場を拡大し続けている。

1980年の発売以降40年近く経過しつつも、常に新しい取り組みを目指し、既視感のないマーケティングアプローチを続けているポカリスエット。

近年は「潜在能力を引き出せ。」「自分は、きっと想像以上だ。」というキャンペーンコピーのもと、インターハイや甲子園を始めとするリアルな部活動応援だけでなく、新聞広告、屋外広告、テレビCM、SNS、YouTubeなど、マスメディアとデジタルメディアを通して、ターゲットユーザーである中高生に寄り添うマーケティング活動を展開。TVを中心としたマスでは、大勢の若者が一糸乱れずダンスをするCMにより、若者の躍動感とチームワークのすばらしさが同世代の共感・共鳴を呼び、ポカリスエットは、「自分たちに寄り添い応援してくれる」というブランドイメージを形成しました。

また、2018年は記録的な猛暑でしたが、水分補給の大切さや熱中症対策の啓発活動も30年以上前から継続して実施し、若者だけではなく、幅広い世代の共感も獲得しました。また競合商品は若者離れが進む中、ポカリスエットは10代の購入率で前年対比+7.6%、購入者あたりの購入金額で+9.4%を記録しています。※インテージSCI 期間2018年1‐12月

ポカリスエットのマーケティングは、ロングセラーのブランドが、定期的にターゲットが代替わりするため難しいと考えられている若年層市場においても、市場を拡大できる可能性があることを認識させました。

 

日本マーケティング大賞 準グランプリ
選考基準
グランプリに準じる成果を上げたプロジェクトを選考委員会で選定。

『漫画 君たちはどう生きるか』のマーケティング
株式会社マガジンハウス

 

受賞理由

社会的視点が切り拓いた新しい市場

原作は、第2次世界大戦直前の1937年に書かれた歴史的名著で、著者は岩波少年文庫の創設にも尽力した、編集者であり児童文学者の吉野源三郎氏。

80年以上前の原作でありながら、現代の世相にも相通ずる社会情勢を背景としている作品の本質を保ちながら、誰でもが読みやすい漫画という形で世に送り出されました。

原作になじみのある年齢層のビジネスマンが多く訪れる丸善日本橋店での先行販売を皮切りに新聞広告を展開。テレビのバラエティ番組で取り上げられて「子どもたちに読ませたい」親たちに広がりが出たことから、更に新聞広告、交通広告、WEB広告を利用して、本書の『どう生きていくべきか』というメッセージを強く訴求し、親から子どもへ、祖父母から孫へ、世代を超えた多くの人の心をつかむことに成功しました。

厳しい環境が続く出版業界において発行部数212万部、同時に発売した小説版も55万部と大ヒットを記録した点も、グランプリに準じる内容として評価されました。

 

日本マーケティング大賞 奨励賞
選考基準
独自性や先行性、社会課題解決性、新しいマーケティングの芽など、規模は小さいながらもキラリと光るマーケティング・プロジェクトを選考委員会で選定。

耳で聴かない音楽会
公益財団法人日本フィルハーモニー交響楽団

 

受賞理由

テクノロジーを駆使した新市場創造マーケティング

音楽を全ての人に開放し、耳ではなく、身体で聴くという新しい音楽の楽しみ方を社会に提案した日本フィルハーモニー交響楽団。音を光や振動に変える音楽デバイス(SOUNDHUGとORCHESTRA JACKET)を用い、聴覚障害のあるなしに関わらず、みんなで音楽を楽しむことを実現した『耳で聞かない音楽会』は、”聴覚障害のある人”という音楽ファンの市場を開拓するキッカケを作りました。2018年4月22日に開催したコンサートでは来場者の98%、新規来場者の96%から高い満足度を獲得。その後も、2019年8月に続編を開催する等持続的な活動となっています。

 

お絵かき爽ハッピー 
株式会社ロッテ

 

受賞理由

新しい食体験の提案で新たなポジションを獲得

ひたすらニッチな味が乱売されるアイス市場で、苦戦していたバニラ味をメインとするロッテのアイス「爽」。カップアイスでは珍しく「キャンバスのように四角い」ことに着目。お絵かき専用スプーンを開発し、ただ食べるのではなく、お絵かきしながら食べる「新しい食体験」を提案しました。

アイス市場の状況を捉え、新たな「フレーバー」を作るのではなく、商品そのものに向き合い、食べる「体験」を新しくするという戦いの土俵を変えたこと、アイスのお絵かきというSNSで自走する仕組みで、キャンペーン開始後3か月で売上が242%へとアップしました。

 

COGY あきらめない人の車いす
株式会社TESS

 

受賞理由

ポジショニングとコミュニケーションによる社会的課題の解決

現在、歩行困難者は280万人以上にも上るとされ、高齢化社会が進むにつれその数はさらに増えると考えられています。そんな中「足をあきらめる」のではなく「足をあきらめない」ために足こぎ車いすに乗る、という新たな選択肢を提示した「COGY」。東北大学との共同研究から生まれたこの足こぎ車いすは、「原始的歩行反射」を応用し足を動かすという革新的な技術で開発されましたが、認知が低く、必要とする人たちのもとに届いていない状況になっていました。そんな現状をポジショニングとコミュニケーションによって打破し、日本のみならずタイ・インドネシア・EUなど世界中で販売。売上は前年比の2.5倍に成長。BBCが選ぶ「最も美しい自転車TOP10にも選ばれています。

 

「神戸タータン」による地域連携マーケティングプラットフォーム構築
神戸タータン協議会

 

受賞理由

地域ブランド普及の新たなマーケティング手法

スコットランドの氏族が独自の大柄格子のデザインの織物を持っている「クラン・タータン」の歴史に着目し、神戸地区の地元商業者、商店街、大手百貨店、行政、教育機関が構築したブランド・プラットフォーム。神戸港の海の青、ポートタワーや神戸大橋の赤、白亜の建築物や特産の真珠の白、そして後ろにひかえる六甲山系の緑を組み合わせた、「神戸タータン」をデザインし、2016年10月の設立以来、120社が加入し、企業や行政の連携などによる220件以上の関連商品が誕生。旧来型の地域マーケティングとは異なる、新たなマーケティング手法の開発として評価されました。神戸ブランドの普及と経済効果の両面で効果をあげています。

 

老舗書店「有隣堂」の挑戦
株式会社有隣堂

 

受賞理由

低迷市場における新たなポジションの創造

横浜を中心に神奈川・東京・千葉に56店舗を展開し創業110 年を迎える書店「有隣堂」。低迷する書籍市場において、東京ミッドタウン日比谷への新業態での出店など、書店という従来の業態の区分にこだわることなく、地域の暮らしに必要とされる機能を自ら発見し、その役割を担う業態として新たなポジションを創造しました。本を売るという従来の書店の「コト」から、多型な「コト」の中に本を再定義した点や、画一的でない地域ごとの特色、エリアニーズを汲んだ新しい店舗開拓は、成熟産業におかれた企業や地域のマーケティングモデルとして注目されています。

 

日本マーケティング大賞 地域賞
選考基準
優れたマーケティング・プロジェクトであることに加えて、経営資源が地域にあること、地域活性化に資すること、地域の特徴を活かした事業であることが条件。日本マーケティング協会の関西、九州、北海道支部でそれぞれ選考し、実行委員会・選考委員会が承認する。

阪急うめだ本店デパ地下「食品メーカーとコラボでヒットを連発するオンリーワン戦略」
株式会社阪急阪神百貨店/関西地区

 

受賞理由

阪急うめだ本店における新しい顧客創造のために、誰もが知っている「あのメーカー・ブランドのあの食品」のプレミアム版を開発しショップ化。さらに2018年には惣菜の分野でも商品を開発・ショップ化。2017年度はオープン初年度に対して+22%の売上高に伸長、2018年度も前年を上回る勢いで推移しました。単に誰もが知っている食品の高級版として話題化させるだけでなく、いずれの商品も手みやげ・贈答品として使えるように開発することで百貨店・メーカー双方にとっても新たなマーケットの創出につながっています。「食の関西」ならではのコラボであり、デパートを再定義化し、活性化を図る企画として、これからの企画にも注目されています。

 

南島原発!宅配クリーニングNexcy/ネクシー
株式会社クラスタス/九州地区

 

受賞理由

長崎県南島原市(島原半島南部、人口4.6万人)にある㈱クラスタスは、「洗濯をもっと楽しく、もっとラクに」をコンセプトに「Nexcy/ネクシー」のブランドでネットで申し込み、宅配便で引き取り・お届けができる、宅配クリーニングサービスを、日本全国を対象に提供しています。同社CTOの神崎健輔氏が「洗濯ハカセ」として有益な洗濯関連情報をブログやSNSで発信し、南島原という地方のハンデをものともせず、提供品質への信頼とPR効果で、年々成長。2018年度前年比200%の売り上げ達成。着想の斬新さとコモディティサービス、スモールビジネスをデジタルの力で全国区にした事例として、地方活性化に携わる人々に元気を与えています。

 

高校がまちを変える ~廃校からの決断~
北海道三笠市/北海道地区

 

受賞理由

平成22年度の生徒募集停止、平成24年3月での道立としての閉校を示された三笠高校。三笠市が選択したのは、市立校として食のスペシャリストを養成する食物調理科単科校への転換でした。その結果、全道各地から将来の進路目標を明確に持った多数の入学希望者が集まりました。昨年7月には「三笠高校生レストラン」をオープンし、営業日には、高校生が創る三笠市や道内の食材を使用した食事やスイーツなどを求め、全道・全国から多くのお客様が訪れており、一つの高校を核とした三笠市の取り組みは、好循環で過疎のまちが復活する貴重な事例と言えます。道立校時の平成21年の入学者数は16名でしたが、市立校としての最初の平成24年には定員40名に対して2.2倍の全道トップの出願倍率となりました。昨年、同高卒業生3名が「地域おこし協力隊」として三笠市に戻り、三笠高校生レストランの料理教室などで活躍するほか、そのうち1名が本年4月に起業しました。

 

第11回日本マーケティング大賞 概要
『『日本マーケティング大賞』は、厳しい経済環境の中でも、企業・自治体・団体等の組織における新しいマーケティングやコミュニケーションの手法、もしくはビジネスモデルの開発を積極的に促すことで、消費者の生活の向上と経済・社会の活性化に資する活動を奨励し、マーケティングのプレステージを高めることを目的として2007年に発表、第1回は2009年より実施されました。11回目となる本年は、日本の市場が成熟化する中で、成長につながる創意工夫が凝らされたプロジェクトが多くエントリー、厳選な審査の中から上記が選出されました。

 

 

 

対象活動

社会に新しく需要を喚起、あるいは市場を再活性した優れたマーケティング活動

<対象活動の具体例>

a 新たにマーケティングの概念を取り入れた企業やNPO、自治体等の活動

b 新しい価値の提案やトレンドを生み出した活動

c 生活者・社会との共存・共生/社会的課題の解決に貢献した活動

d 社内外、産・官・学とのコラボレーションを取り入れた活動、または生活者との共創

e BtoBビジネスや専門市場におけるマーケティングとして際立った活動

f グローバル市場で成果のあった活動

g マーケティングによりブレイクスルーをもたらした活動

h オリジナルな新しいビジネスモデルの構築

i 規模が小さくても、キラリと光る活動

j 地域特性を活かしたマーケティング活動

k 上記以外でも、今年を象徴するに値する新鮮な戦略提案(マーケティング提案)
対象範囲 日本市場における企業・団体・組織の活動、および日本法人の海外市場での活動
(自治体、NPO、大学・病院なども含む)
対象期間 2018年1月1日から2018年12月31日までの企業・自治体・団体の活動
推薦資格 日本マーケティング協会会員および日本マーケティング学会会員(自薦・他薦を含む)
審査方法 選考委員により、推薦資料を基に追加情報を含めて討議を実施し、選定
審査結果 2019年6月21日(金) 「日本マーケティング大賞 表彰式」にて各賞贈呈
(表彰式会場: 赤坂インターシティコンファレンス 東京都港区赤坂4-2-25)
選考委員 「日本マーケティング大賞」選考委員会(産業界・学界から17委員)
選考委員長: 高田 覚 朝日新聞社 取締役 
主  催 公益社団法人 日本マーケティング協会
協  力 日本マーケティング学会
後  援 経済産業省

 

 

2018.11月現在

(敬称略)

 

実行委員長 後藤 卓也 JMA会長(花王㈱ 前会長)
実行副委員長 嶋口 充輝 JMA理事長(慶應義塾大学 名誉教授)
委 員 俣木 盾夫 JMA副会長(㈱)電通 相談役)
八木 隆史 JMA副会長(㈱電通 執行役員 関西支社長)
石原 進 JMA副会長(九州旅客鉄道㈱相談役)
村田 正敏 JMA副会長(北海道新聞社 代表取締役会長) 
石橋 正明 JMA専務理事

 

選考委員長 高田  覚 朝日新聞社 取締役(新任)
選考副委員長 加治 慶光 アクセンチュア㈱ チーフ・マーケティング・イノベーター

委 員

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恩藏  直人 早稲田大学 商学学術院 教授
古川 一郎 武蔵野大学 経済学部 教授
廣田 章光 近畿大学 経営学部 商学科 教授
八幡 慎一郎 朝日新聞社 メディアビジネス局長補佐
萩原 一平 ㈱NTTデータ経営研究所 研究理事(新任)
湯藤 久美子 花王㈱ マーケティング開発室室長(新任)
市岡 利之 ㈱竹中工務店 営業本部 副本部長(新任)
広瀬 哲治 ㈱電通 執行役員 JMA理事
米野 宏明 日本オラクル㈱ マーケティング本部 本部長(新任)
矢野 敦子 日本生活協同組合連合会 ブランド戦略本部 マーケティング部長(新任)
加治佐 康代 ㈱ビデオリサーチ 営業局 局長
嶋本 達嗣 ㈱博報堂 執行役員 JMA理事
矢代  卓 マガジンハウス㈱ 広告局局次長(新任)
木下 史朗 ㈱三越伊勢丹ホールディングス デジタル戦略部
クロスメディアディビジョン ディビジョン長
赤金 重幸 読売新聞東京本社 広告局次長(新任)

 

運営事務局 服部 峰郎 日本マーケティング協会 事務局長
白根 有一 日本マーケティング協会 研究開発局 エグゼクティブコンサルタント
河西 章宏 日本マーケティング協会 関西支部 事務局長
水戸 信之 日本マーケティング協会 関西支部 エグゼクティブマネージャー
竹原 聖人 日本マーケティング協会 研究開発局 シニアコンサルタント
大坪 満 日本マーケティング協会 九州支部 事務局長
梶原  仁 日本マーケティング協会 北海道支部 事務局長
松本 成博 日本マーケティング協会 研究開発局 コンサルタント
横山 麻衣 日本マーケティング協会 総務部 アシスタントマネージャー

 

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